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 今日もいた――。  初めて見た日から梓は踏切の男が気になって仕方なかった。毎週月曜日に必ずカメラを構えている。雨の日には傘を片手にシャッターを切っていた。  撮るのはいつも十一時二十八分に通過する寝台特急トワイライトエクスプレス。男が撮っている電車が気になってわざわざ調べてしまった。  月曜日にだけ来るのは仕事が休みだからか。月曜日が休みといえば簡単に思いつくのは美容師だ。確かに線の細い外見からはそうとも見えなくはないものの、いまいち決定打には欠けてしまう。いつも徒歩で来ているようだから住んでいるのは近所? それとも職場が近所で、休み時間に来ているのだろうか。  あの表情が見たくて中間点に停止できるよう、ついつい速度を調整する。うまく停まれればラッキー、失敗したときなどはその日一日鬱々と落ち込んでしまう。  五月に入ってからは男の服装も半袖に変わっていた。シャツにシーンズとシンプルなスタイルが多く、服から覗く素肌は予想通り抜けるように白い。  あの白い首筋にキスマークとか付けたらかなりエロいよなぁ。なんて思わず不謹慎極まりない妄想が膨らむ。現実的にお近づきになれる可能性は一割未満といったところか。ましてや妄想が現実になる可能性は恐らく一パーセント未満だろう。  独り身の熱を持て余し気味なせいか、妄想はどんどんエスカレートしてしまう。跨られて、あの感情の少ない瞳で見下ろされたなら、理性なんか一瞬で吹き飛んでしまいそうだ。  貨物用の遮断機が上がり、それぞれが動き出す。  同時に、散歩に出かけていた梓の理性が戻ってきた。  バイバイ、また来週――。
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