殺人犯は、寂しそうに笑いました。

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殺人犯は、寂しそうに笑いました。

自分の隣で笑ってたのは、 両親を殺した敵 そして、今 なのを殺した なのは最後に、途切れながら言う 「ごめ………りがと、…」 「…ひよ…なら……されても…い」 「…ばいば、」 そこで、 なのの息は切れた 同時に、なのの命も、切れた これでやっと敵打ちができた 嬉しい気持ちでいっぱいだ ははっ、は、は、… やった よかった の に そんなはず なんで だってッッ こいつは嫌いだったはずなのに 恨むべきやつなのに 殺してスッキリするはずなのに どうしてこんなに 胸が苦しいんだ なのの声を、 なのの顔を、 なのの命を 全部自分で消したのにっ… 頬を熱いものが伝う 苦しい これが、悲しいという感情? 意味が分からない 頬を、流れていくものは止まらない やがて、ぽたぽた、と落ちてゆく   『ひよ。泣かないで』 『ひよ、しょうがないよ』 『今まで、ありがとう』 その、たった三言だけ、聴こえた どこから、どのようにして聴こえたかは分からない でも なのの、声 そんな気がした その声は、恨みでもなく 怒り、でもなく 優しすぎる言葉 胸が苦しくて、きゅうとなる 自分は、悲しいんだ なのに、本当は死んでほしくなんてなかったんだ 自分でやったのに 後悔なんて… なぁ、なの まだ、死んでないよな? なぁ 起きてよ、 「なのッッ………」 最後の殺人犯は 寂しそうに笑い 自分のした事を後悔した 最後の殺人犯は 悲しみを知り 優しさに触れることができた この後、最後の殺人犯が どうなるか それは、 殺人犯次第です
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