お化けになってまで

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お化けになってまで

ねぇ、これってドッキリ? そうでしよ? だってひよが私を置いていくわけないもん。 ねぇ、ひよ 起きてよ          * * * 今日はひよと遊ぶ約束してる。 朝からすっごく天気が良くて、なんとなくいい日になりそう。 そんな感じがした。 ぐぅっと背伸びをする。 あぁ、でもひよこんな快晴はあんまり好きじゃないんだっけ? 私は快晴も曇りも雪も好きだなぁ 前まではこんなに細かいところまで知らなかったのに、いつの間にか、ひよの事が沢山分かってきて少し嬉しくなった。 早く来ないかなぁ まだ約束の十時半まで三時間以上もあるのにもう着替えちゃって、まあ…部屋も綺麗に…するし あとは待つだけ。だよね? 今日はひよにドッキリ仕掛けるからいつも以上に楽しみ。 どんな反応するのかな? また怒られるかな? それとも、また笑ってチョップで許してくれる? それから、また一緒にご飯食べに行こ 今日はひよの好きそうなあのカフェに行きたいな そう考えながら ふと思いついて、誰に見せるわけでもない小説を書き出した。 最近、小説を描くのが好き。 楽しいし、暇潰しになるし。 物語の中で幸せになってると、現実でも、頑張ろうって気持ちになるんだ え?もちろん、主人公がうちで、ヒロインがひよだけど? いつか、凄い自信作が出来たらひなに見せたいなぁ まあ、今のままじゃ無理だけどね。 もっと腕上げたいな。         * * * なんで? 遅い…よね どうしたんだろう? 体調悪いのかな? いや、でも、それならひよだったら無理にでもLINEしてくるもん。 なら…忘れちゃった? 一瞬頭の中に浮かんだだけなのに、 そう考えるとどうしようもなく悲しくなってくる。 だめ。ひよが忘れるわけない。 ブーブー その時、電話が来た。 よ、良かった。ひよ、忘れてなかったんだ ほっとして電話に出た が その内容に、固まった。 「ヒヨが…っ、交通事故にあって、死んだのっ…」 ひよのお母さんからだった。 泣いてた。 聞き間違えかと思ったけど、違った。 死んだ…?ひよが… 病院を聞いて、電話を切った。 それから、自転車で全速力を出す。 なんだかあの日、ひよが不審者から助けてくれたみたいだ。 なつかしいな 普通は20分もかかる病院も今日は5分で着いた。 走って、病室に行った。 そこには、頭に包帯を巻き付けてるひよが居た。 健康に焼けた肌は白くなってて、綺麗なピンクだった唇は青くなっていた。 あの大好きな見飽きないかっこいい顔と細くて綺麗な体はそのまま。 あ、これってあれだ。ドッキリでしょ? ほら、もうすぐ、ドッキリ大成功っていう看板が出てくるんだ。きっとそう。ほら 「ねぇ」 「起きてよ」 「ひよッ…」 「何でッ、何でおいてっ行くのっ…?」 その温度はどこか懐かしくて 私はそのまま泣き崩れてしまったらしい          * * * 驚くくらいのスピードでいろいろな式は終わっていった。 ひよは、消えるようにいなくなった。 ひよは、私の家に来る途中、ヤバいくらいのスピードを出してたトラックが突っ込んで来て、事故にあったらしい。 それを聞いてから今まで、ずっと考えてる 私が今日遊ぼうなんて言わなかったらひよは生きてた 私が早く来てなんて言わなかったらひよは生きてた 私と、出会わなければひよは生きてた 私が、私が、私が ひよを殺したんだ 家に帰っても、おかえりって言う声はない。 ひなの香りがまだ微かにしてて、また涙が落ちる それから、ずっと部屋に引き込もってた。 家にひよが置いていったパーカーを眺めて、胸が悲しみで押し潰されそうだった。 もう、何日、何週間、何ヵ月たったかも分からない。  でも、その間ずっと考えてた 私が今日遊ぼうなんて言わなかったらひよは生きてた 私が早く来てなんて言わなかったらひよは生きてた 私と、出会わなければひよは生きてた 私が、私が、私が ひよを殺したんだ ひよ痛かった? ひよごめんね 痛い?痛かった? ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい 私なんかのせいで、ひよを 腕にある傷はもう毎日の日課のよう 切ったら悲しみが薄らいで、でも痛くてこの罪を償える気がして、 何より ひよに近付ける気がして。 happy🔚 ひよに、会いたい 前まではほぼ毎日会ってたのに どうしてさよならも言わずに行ってしまうの? 体育座りをして、布団を頭から被って、ご飯なんて何日も食べてなくて ずっと泣いて、ぼーっとしてた。 LINEとか何件も来てるな そう思ったけど、読んでみても同情のメールばっかり。 そんなのはいらないのに、何だか申し訳なくなった 気付けば、 ひよのLINEを開いてた。 今までの会話を見てた。 全部、かっこいい、Sで、かまってくれて、たまに優しいひよだった。 もう、会えないんだ ふと、思い付いてもう何週間もやってなかった座禅をした。 ちょっと前までは、毎日の日課だった。 これをしたら、神様と話してる気がしたから。 神様、お願いします お願い、最後でいいからひよに会いたい。 死んでもいいから。 どうか… 会わせて下さい …さすがに、だめかな ふと、スマホを見た 少し、ありもしない期待をしていたのかもしれない。 「今、丸亀駅」 この前のLINE、か 一瞬、びっくりした。 この会話で終わったって… これじゃあメリーさんみたいじゃん 怖がり治すのまだ気にしてんの? 私怖いの嫌いなのに 「今、讃岐塩屋やろ?」   何で? 誰? 嫌がらせ? 「今、 お前の家の前」 なに?これ ほんとに、ひよ? そんなわけない! …ついに、壊れちゃったかな、私 あり得ないもん ひよが、戻って来るわけないのに また、涙が出てきた もう、嫌だよ 会いたい、会いたいのに、 もう、やけくそで私からも送ってみる。 「くるならきてよ」 あ、メリーさんって確か返信すると死んじゃうんだっけ でも、いいや。 ひよに会えるなら。 死んでも会いたいから。 会ってごめんなさいする。たとえ呪われても。 ひよならいい。   「へえ」 「強くなったな」 「本当に、ひよなの?」 「メリーさんですけど?笑」 それ以上は手が震えて打てなかった。 本当に、ひよ まだ信じられない、というか、追い付けない。 何で?ひよは死んだのに。 「今、お前の家の前」 「びっくりしたやろ?」 今は家に誰も居ない。 カーテンの隙間から見てもひよの姿は見えない。 久しぶりの光だった。 久しぶりに笑顔になれた。 少しだけ期待できた。 ブーブー 「今、お前の部屋の前。」 「おそい」 「うっさい」 今、ひよとLINEしてるんだ。 ひよに話してもらえてるんだ。 楽しいな、 こんなの久しぶりだから? 早く、来て じゃないと、悲しすぎて、 ぎゅう 最後のLINEは鳴らなかった。 それは、LINEしゃなくて、耳元で囁かれたから。 「今、お前の後ろ。」 ひよの腕が暖かった。 悲しいのと、嬉しいのと。 色んな感情が入り混ざって、 どうしても、涙が出てきた。 何でだろ?さっきまで感情もなかったのに 「ひ…よぉ…っ」 ひよは黙って背中をさすってくれる。 たまにある、優しいとこだ 涙はもう、止めようとも思わなかった 「ひよっ…ごめっ、ね…うちがっ、誘ったからっ…」 ただ、ひよの消えそうに思える細い腕を抱きしめながら、泣いた。でも謝れた。良かった。 ひよは、少し考えた後、優しい口調で言った 「…なのの、せいじゃない」 「大丈夫やけんな、」 ひよは、優しく慰めてくれた。 他の人がくれた同情とは違う、暖かい慰めだった。 ひよの暖かい声が私の部屋に小さく響いた。 「ごめ…、て、はっ!?」 ひよは、うちの腕をいつの間にか掴んでた。 あ、 長袖で隠してたのに 汚いから見せたくなかったのに。 すぐに隠そうとしたけど、ひよの力が強すぎて無理だった。 「お前、は!?え、ちょ、何してんだよ!」 見つかった… 終わったっ、 「…ひよに、会えるかと…思っただけ」 ごめん、とだけ呟いて腕を隠して踞った。 「…バカ、あほ、」 ひよは、一瞬怒ってた でもすぐに、優しく言ってくれた。 「ごめんな、」 「…」 「大分窶れたな、お前」 「…」 「こんなに、細くなって」 ごめん、とひよは私の隣に来た。 ひよの顔が見えた。 ひよの香りがした。 ひよが隙間から覗きこんでくる。 「そんなに、寂しかったんか?」 ひよが悲しそうに聞いた。 こくり、とうなずいた。 今までで比べ物にならないくらい、寂しかったんだから。 「…そっか、ごめんな」 とひよは、頭を撫でてくれた。 久しぶりだった。 私より、身長低いくせに 鈍感で、かっこいいくせに ひよに包まれるのも悪くなかった。 無意識に零れ落ちる涙は止まりそうになかった。 「会いたかったよ、ひよ」          * * * 「そろそろ、行かないと」 「っ、嫌だよ」 「一緒にいて?!」 「…ごめん、決まりなんだ」 「ね、ひよってメリーさん?」 「は?ま、一応?」 「じゃあ、連れてって」 「え、は!?」 「意味わかんねぇダメだ!!」 「なん、で  また、私だけ、置いていくの? …寂しいよ」 「しょうがないやん、…」 「ひよがいないなら、 連れてかれ 「だめ! 来んなアホっ!!」 「…っ、」 「じゃあ行くからな また、いつかな」 (ヨシヨシ( 「…うん ありがと。」 # 僕はどこへ向かうんだ そんな歌詞があった気がする でも今は ゛僕はどこへ向かっていい?゛ だ この世に居場所なんてない だから 死ねば 日和が優しく迎えてくれて よしよしって 頑張ったね、て もう大丈夫だよ、て 言ってくれると思った でも勘違いだった それもそうだよね この世では私に付きまとわれていたんだから あの世でくらい 私と離れてたいよね だから あの世にも、居場所はない 僕は どこにもいちゃいけないの? 重い 苦しい でも、死んじゃだめ でも 頑張らないと 僕が 頑張らないと 迷惑かけちゃう 「めんどくせぇ… そんなんならいっそ 死ねばいいのに」 「だめだ! 来んなアホっ!!」 嫌われ者なの? そっかぁ ねぇ神様 もしも願いが叶うなら みんなからの人気者になりたいです でもワガママですね せめて 迷惑をかけないような人になりたいです そして いっぱいの人と仲良くなって たくさん楽しんで 必要とされて いつも笑えるような人に ……なりたかった ひよは、僕が死んだらどんな反応をしたのかな 悲しんでくれるのかな やったあ、とか… わらってたのかな あの世にも、この世でも 居たくない
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