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第8話 逃避行(前)
「報道されているね」
恋人屋本舗の事務所で、テレビを見ながら梓(板倉梓:所員)が言った。 梓は谷中よみせ通りにある洋食屋『マロ』から取り寄せたボリューム満点のランチを食べていた。
「食べ過ぎだろう。そんなに食べていたら太るぞ」所長が言った。
「大丈夫、この後ジムに行くから」
「過食して太ったらやせる為にジムに行く。だったら、最初からそんなに食べなければいいのに、無駄なことしてるなあ」
「もやしが主食の所長には判りませんよ。この食べると言う事の誘惑が・・・・。それよりも、これで良かったんですかね」そう言ってテレビの話題に戻った。
「うん・・・、俺にも判断つかないなぁ」
・・・・・
一週間前、藤岡と名乗る50歳代の男性が恋人屋本舗を訪ねて来た。
所長が対応したが、自席にいた拓也にも(事務所が狭いので)話の内容は聞こえていた。
依頼内容はとてもシンプルだった。
急遽、娘と家族旅行として北海道旅行に行きたくなった。でも、今、事情があって母親がいない。母親役の女性をアサインしてくれないか。 拘束時間は、北海道までの旅程と北海道での一泊のみ。次の日の午前中には、別行動で東京に戻ってきて貰って構わない。 ただ、お願いがある。お金は自分が払うので、北海道までの航空券と北海道での宿はその女性が彼女の名前で手配して欲しい。 必要経費を除き、1日15万円、2日分30万円でどうだろう。
「ひとり1日5万円が相場です。随分、貼り込みますね」
「急なお願いだし、余分な事もお願いするので」
所長が席を外し、拓也の所へ来て訊ねた。
「どう思う?」
「所長、少し怪しくないですか?」
「少しでは無くかなり怪しい」
「受けるんですか」
「どうするかな」
おそらく依頼した本人も、相手が怪しむだろうというのは自覚しているようで、表には出さないが、受けてくれるかかなり心配していそうな気配が感じ取れた。
「娘さんは、ご自宅ですか?」
「下(外)で待っています」
「ああ、どうぞ、入ってもらって下さい」
藤岡が娘を呼びに行っている間に、所長は梓に来るように連絡した。
娘が入ってきて、藤岡と一緒に座った。『結愛』という名前で高校一年生だと言った。有名な女子校だった。
清楚な感じで、明るく控えめで、藤岡とは仲の良い父娘に見えた。ただ、これから旅行するというのに、少し暗く見えたのが気になる。
梓が来たので、所長が梓を藤岡と娘さんに紹介した。 「お受けするとすれば、彼女が対応します。彼女で大丈夫ですか?」
「問題ありません。よろしくお願いします」
そして、藤岡と娘さんがいる場所で、梓と僕に依頼内容を説明した。藤岡も少し付け加えた。梓は娘さんと少し話をした。
その後、所長が「お待ちいただけますか? お受けするかどうか、会議室で少し打合せをさせてください」と言って、僕たちを倉庫にしている小さな部屋に連れ込んだ。
「会議室? ここ座る場所ないけど」
「うるさいなぁ。倉庫で打合せします、なんて言えないだろう」
「そりゃ、そうだ・・・」
「それより、どう思う?」と所長。
「彼、肝心な事(本当の理由)、何も言ってないですよね」と拓也。
「そうなんだ。本当の親子かなぁ」
「仲は良さそうですね」と梓が言った。
「身分証の提示を求めますか?」拓也が言った。
「今持っていないと言われたらそれまでだし、それで、他に行ったら面倒だろう。何かあるのなら、ウチで対応してあげたい」
「悪い人には見えない。私にも、なにかとても困っている様に見える。私、行ってもいいよ」と梓が言った。
「でも、もし梓が何か危険な目には遭ったら・・・。よし、俺が付かず離れず同行することを条件にしよう」と所長が言った。
「僕が行きます。所長は(弁護士だから)行かない方がいい」拓也が言った。
拓也は何となく犯罪の臭いを嗅ぎつけた。でも、その上で、願いは叶えてあげたい、そのギリギリの判断だった。
「う~ん、申し訳ない。頼めるか?」
「任せてください」
「何か、気づくことがあれば直ぐに連絡をしてくれ。あとGPSも切らないでくれ」
「判りました」
藤岡に拓也同行の条件を伝えたら、あっさり了承し、一人分の追加の代金を支払うと申し出たが、必要経費(航空機チケットと宿泊費)のみ追加で請求した。 藤岡は代金と必要経費をすべて現金で前払いした。
「で、急遽と言う事でしたが、いつから出発されますか?」
「今から。このまま」
所長と拓也は顔を見合わせた。
梓は家に連絡していた。とても自由な家だな、拓也は思った。(子供も旦那も梓のバイトの内容を知っていて、面白がって協力していた)
「今からだと、13時のANAに間に合いますが、それにされますか?」
「はい、プレミアム(席)が空いていたらそれでお願いします」
梓がガッツポーズをした。
拓也もガッツポーズをした。
「お前は普通席だよ」所長が拓也に言った。
「チェッ」
結愛が笑っていた。
「では、宿泊先は移動中に確保して、連絡します。札幌でいいですか?」航空機チケットのバーコードを印刷して渡しながら、所長が言った。
「はい、よろしく」
機上で梓達がプレミアムクラス席で優雅に食事をしている時、拓也はあんパンとパック牛乳で食事していた。 別に他の食事でもよかったのだが、なんとなく刑事ものを真似してみたくなっただけだ。尾行では無いけれど、いつでも付いていけるように、食事やトイレは素早く済ませた。
ホテルは所長から連絡があり、『札幌パークホテル』になった。
拓也から所長に連絡が入った。
チェックイン後、時計台、テレビ塔、旧北海道本庁舎など(まずは皆が行くような)観光地を回って、ホテルに戻った。
梓からも連絡が入った。 明日は北海道大学の銀杏並木やラーメンを食べに行こうと盛り上がったらしい。それで、もう一泊したいので契約を延長できないか、と言われた。自分は構わない、との事だった。
所長は了承し、拓也も延泊した。 2泊後の午前中、梓から「今、契約が終了し、藤岡さんから1日の追加分15万円と必要経費として10万円の合計25万円を頂き、ホテルを出た」と所長に報告があった。
拓也からも報告入った。 「今、梓さんがホテルを出るのを確認しました。僕も出ます。ただ、気になることが・・・」
「どうした」
「クレジットカードを使っていません。すべて現金です」
「うん・・・それは・・・」
「移動はタクシーだし、観光地、食事、その他なんでも、結構、贅沢な旅行ですよ。僕はいつもあんパンですが・・・。一昨日の事務所への支払い、今日の梓さんへの支払いなども合わせると、100万円以上、いや200万円近くの現金を持ち歩いている事になる」
「たまにはジャムパンも食べろ。ATMへは?」
「寄っていません。藤岡さんに帰りのチケットを渡しましたか?」
「いや、その依頼は受けてない」
「マズいのでは無いですか?」
「マズいな」
所長は、梓に連絡をし、さっき受け取った現金を全て拓也に渡すように伝え、拓也にはそれを資金に、もうしばらく先ほどの親娘を、今度は隠れて尾行するように伝えた。
藤岡と結愛は、『札幌パークホテル』からタクシーに乗った。
・・・・・・
8ヶ月前。
結愛(ゆあ)は校門を出た。結愛が中学生から通っているこの学校は文京区の住宅街の中にあった。山手線の駅から10分もかからない所にあるのに、低層住宅街の中にある学校はとても静かで落ち着いた雰囲気だった。
通学路から一本外れた道沿いに気になる家があった。木造の平屋で部屋も2~3しかないと思われる小さな家で、朽ちかけていると思われた。 長い間空き家だったのに、改装され、白い色が塗られ、庭も整備されたその家はとてもかわいい感じがした。塀が無く、色とりどりの花が植えられた庭は外からも見渡せた。 ベランダに椅子とテーブルが置かれている。
結愛がその家を知っているのに理由がある。その家の隣に小さな公園がある。結愛は毎週火曜日そこで時間をつぶしていた。
なんとなく人影が見える気がして、火曜日では無いけれど、その家を見に行った。 さぞ、かわいい女性が住んでいるのかと思ったら、なんと50歳過ぎの男性がベランダの椅子に座り紅茶を飲んでいた。
じっと見ていると、目が合ったので、慌てて会釈したら、その男性も丁寧に会釈してくれた。
火曜日、結愛は公園のベンチに座って暗くなるまで本を読んだ。時々家の方を見ると男性がやはり紅茶を飲みながら本を読んでいた。
1ヶ月ほど経った。桜も散り、気持ちの良い季節になった。火曜日、いつものように本を読もうと公園に向かうと、小さな白い家のベランダには誰もいなかった。
「あれ! 今日はいないんだ」そう思った瞬間、その男性が本を持って家から出てきたので、目が合った。
「おや、こんにちは」その男性が声を掛けてきた。
「こんにちは」
「お嬢さん、よくあの公園で本を読んでおられますね。よろしければ、紅茶でもご一緒しませんか」
そう誘われて素直に「はい」と言っていた。その男性は藤岡と名乗った。もちろん表札は見ていたので名前は知っていた。
その後、2回ほど、お茶を飲んだ時に「結愛さん、ケーキ食べませんか?」と訊いてきた。藤岡が好んでケーキを食べるとは思え無かったので、結愛の為に買って置いたに違いない。
それからは色々話をした。結愛が父親と二人暮らしな事や、藤岡が独身で失業中であること、なども判った。
「お仕事辞めたの?」
「うん、リストラって知っていますか?」
「なんとなく」
「早く辞めたら、退職金をたくさんあげると言われましてね。ついつい辞めちゃったんです。結愛さんのお父さんは何をしているのですか?」
「会社に勤めてしています。F社。忙しいみたい」
F社は藤岡が勤めていた会社を敵対的TOBで買収した会社だったので、驚いた。名前(小林)に覚えがあった。結愛の父親はF社の専務だった。
藤岡の勤めていた会社の特許と技術が欲しかったF社は、買収後、技術部門以外のリストラを断行した。買収の発案と実施、その後のリストラの指揮を執っていたのがその専務だった。 強引、豪腕な上に尊大なので、F社のなかでも煙たがる人は多かったが、実績を上げているので誰も逆らえなかった。社長さへ、その専務には気を使っていると聞いた。
リストラを断行され、部下が次々と辞めていった。藤岡は技術営業を担っておりF社から見ても有能だったのでリストラの対象にはならなかったが、部下や同僚が辞めていくのを見て、早期退職に手を挙げた。
藤岡は独り身だったので、会社を辞めても金銭的に余裕があり、生活には困らなかった。多めにもらった退職金で亡くなった母親の住んでいた(そして子供の頃を過ごしていた)小さな家を補修し移り住んだ。
その買収劇をニュースなどで知っている人からは、『F社は酷いね』と同情されたが、藤岡はそうは思っていなかった。株式を公開している以上、買収されたくなければ手を打っておくべきだったし、F社は年収1年分と退職金を2倍にする事を条件に早期退職を勧めたので、条件的に酷いものでは無いと思っていたが、世間的には非道な買収劇だと見られていた。
確かに、リストラにあった部下や同僚の中には、子供がいる世帯は生活に困っていた者もいたのは事実だ。
「僕も、そろそろ仕事を探そうかな」
「うん、それが良いよ」
「でも、(結愛が来る)火曜日の夕方が休みのお仕事を探しますね」
「そんなに都合の良い仕事あるかなぁ」と笑いながら結愛は言ったが、火曜日という言葉に少し悲しそうな顔をしたのを藤岡は見逃さなかった。
ある水曜日の学校帰り、結愛が藤岡の家を訪ねてきた。
藤岡は驚きながら応対した。
「どうしたの結愛さん。今日は水曜日だよ。とにかく紅茶を入れようね。いつもの椅子で待ってて下さい」
その言葉には耳を貸さず、結愛は藤岡をベッドの部屋に押し込み、押し倒した。もちろん、男の藤岡が本気で抗えば、止めることもできるが、真剣な結愛の表情にどう行動したら良いのが解らず、為すがままに押し倒された。
「どうしたんですか、結愛さん」
「助けて・・・」そう言って、藤岡の上に馬なりになっていた結愛は、藤岡のスラックスのベルトを外し、ファスナーを下げようとした。
「止めなさい!!」藤岡は驚いて初めて大きな声で結愛を制した。
「止めないで!」結愛が叫ぶようにそう言ったので、藤岡は馬なりになっている結愛の両肩を持って「どうしたんだ。何があったんだ。話をしなさい」と促した。
結愛が泣きながら話した内容は、藤岡には衝撃だった。
結愛は母親の亡くなった1年前から、実の父親に犯されていた。
母親の四十九日の法要が終わった夜、疲れてうたた寝していいた結愛が気が付くと、下半身を露わにされていて父親が上から覆い被さっていた。 結愛は激しく抵抗した。 だが、その時父親から驚くべき事を聞かされた。
「結愛、おまえは俺の子供じゃない」
何のことか判らなかった。自分は両親が結婚し2年後に生まれたと聞いていた。
「お前の母親は、結婚しているにも関わらず、俺以外の男に抱かれていたんだ。俺もお前の母親を抱いていた。でも俺の子とは絶対に違う」
父親は無精子症だった。その事を母親にも知らせていなかった。母親はおそらく誰か別の男性とのセックスで妊娠し、それを父親との間の子として出産した。 父親はその事を知っていて、尚且つ、母親に知っていることを知らせず、今まで何事も無かったかのように暮らしていたのだ。
「どうして・・・」ショックを受けながらも結愛は訊いた。
「お前の母親が誰か他の男に抱かれて、悶えている姿を想像すると興奮するのさ。その姿を想像しながらお前の母親を抱いていた」
父親は、浮気した母親と自分の子供では無い私と、何事も無かったかのように暮らした。それは優しさなどから許した訳では無く、母親や結愛への屈折した感情を性的な興奮に変えてそれを甘受して生きてきたのだ。
昨日、いや、つい先ほどまで優しいと思っていた父親が実はその笑顔の裏でそのようなギラギラした性的な視線で自分に接していたのかと思うと、その二重性がとても恐ろしかった。
「だから、お前はこれから母親の代わりに俺に抱かれなければいけないんだ」
そう言われて抵抗する気力も無くなり、身を任せた。それが中学3年生の時だ。
結愛の父親は会社で重役を担っており忙しかった。夜も接待、休日もゴルフ接待などが多かった。 その父親が、火曜日(一番、用事が入りにくい曜日のようだった)だけは少し早めに帰って来て結愛と過ごした。 母親が亡くなった後、家の家事の手伝いの為に家政婦に来て貰っていた。それが月・木だったので、その事からも火曜日は父親にとって都合が良かった。
中学3年の女の子にとって、父親とのセックスが楽しい訳など無い。気持ち良いとかいう事を感じる事もなく、ただ、抵抗せずに終わるのをじっと待っているだけだ。 そんな火曜日が嫌いで、ついつい家に帰るのが遅くなり、ブラブラしていてあの公園と小さな家を見つけた。
その小さな家のベランダで美味しい紅茶とケーキを頂きながら、静かな藤岡さんと本の感想などを話す穏やかな時間を過ごす事で、父親に抱かれるという地獄を乗り越えていた。
ただ、父親に毎週の様に一年抱かれていると少しづつ身体に変化も出てくる。この数ヶ月、抱かれる度、感じるようになってきていた。 最初に抱かれたときは死体の様に微動だにせず、ただ、股を開いて抱かせていた。それがこの数ヶ月は感じる事が多くなってきて、思わず足も動かしてしまうし、身体も反らしてしまうことがあった。そして何よりも、声が漏れた。
それに連れ、父親も興奮するのだろう。セックスもしつこくなってきた。 昨日は特にそうだった。 長く丁重なクンニで感じてしまい、セックスでついに逝ってしまった。自分でも自分の躰に何が起こっているのか判らなかった。自分の身体が自分のモノでは無いような気がして、理性や感情が身体から離れてしまっていた気がする。 大きな声を上げ、身体を震わせ、父親に抱きついていた。 父親が果てても、しばらく自分の身体が痙攣しているが判った。 意識を取り戻すと、わき上がる嫌悪。 ところが、しばらくして父親が、また自分の中に入ってくると、また、意思とは関係なく感じ、さらなる快感を求めてしまう躰。
深夜まで犯され続け、ドロの様に眠りこけた。目が覚めたとき、父親は会社に行った後だった。 重い身体を引き摺り、ノロノロと起き上がる。昨日、意識では拒絶しているはずなのに、躯が勝手に反応し、快楽の最中に本能的に「もっと・・・、もっと・・・」と口走っていたのを覚えている。 そんな自分を限りなく嫌悪した。股の間にまだ、あいつ(父親)のものの感覚が残っている。
シャワーを浴び、学校へ行き授業を受けていれば、落ち着くと思っていたのに、その股の間の嫌な感触は強くなった。 何かが入っているのかと思い、時々トイレに籠もり、自分の指を入れて掻き出そうとしたが、当たり前だが何も入っていない。 帰る頃には吐き気がしてきた。
我慢できずに、藤岡の家に飛び込んだ。 藤岡に抱いて貰えれば、藤岡のものが自分の中に入れば、あいつの感触を消す事ができるかも知れない、そう思ったのだ。
涙ながらに語る結愛を優しく抱きしめながら、「結愛さん、よく話してくれました。辛い目に遭いましたね。とにかく、降りてくれませんか。お茶を飲んで少し落ち着きましょう」と言った。
「嫌です。どきません」
藤岡は考えた。今、結愛はボロボロの精神でまともな判断出来る状態では無い。おそらく常識的は説得などは逆効果だろう。下手に説得して、自分(藤岡)にも心を閉ざせば、取り返しの無い事をするかもしれない。
「結愛さん、判りました。でも、こんな形は嫌です。せめてシャワーを浴びさせていただけませんか?」
その申し出を結愛は受け入れた。そして自分もシャワーを浴びたいと言った。
シャワーを浴びた後の藤岡とのセックスは優しかった。父親に抱かれたときと同じように感じ、そして逝くのだが、父親に抱かれたときの嫌悪感ではなく、満足感が躯を満たしていく。 父親は無精子症なので、いつも結愛の中で出している。「今日は大丈夫な日だから、中で出して」結愛が言った。実は安全かどうかギリギリの日だったのだが、父親の精液が子宮にかかる感触を、藤岡の射精で消したくてそう言った。 終わった後、結愛は藤岡に寄り添い抱きついてうたた寝した。
その寝顔を見ながら、藤岡は父親に怒りを覚えた。
目を覚ました結愛は先ほどのパニック状態ではなく、とても落ち着き静かな態度だった。恥ずかしそうに下着を着ける仕草がとても初々しい。
落ち着き、いつものように紅茶を入れて二人で飲んだ。 藤岡は結愛に、自分が行くからと言って、児童相談所へ相談することを勧めた。 結愛は躊躇い、少し考えたいと言った。 藤岡はその事を了承したが、後で『やはり、その場で相談に行っておくべきだった』と後悔することになる。
それから2ヵ月、結愛は毎週火曜日に藤岡の所へ来てお茶を飲み好きな本の話などして過ごし、そしてその夜、父親に抱かれ、水曜日は苦渋の表情で日中を過ごし、夕方、禊を受けるかのように藤岡に抱かれると、落ち着きを取り戻した。
藤岡は高校生とセックスをする事に、大変な罪悪感を持ち苦しんだが、同時にセックスが終わった後、自分にしがみついてうたた寝する結愛をとても愛おしく感じた。 とても幼い表情の結愛だが、藤岡は女の子ではなく女性として彼女を愛し始めていた。
第8話 逃避行(前) 完
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