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事の発端はよくある話だった。
「え、お見合い?」
「あぁ、そうだよ」
「……」
ある日突然父から告げられたこのひと言から全ては始まった。
うちは昔、大きな建設会社を経営していてそれなりに裕福な生活をしていた。
しかし自社関連の下請け業者の手抜き工事が多数明るみになり、それを受けて一気に業績は低下。私が高校に入学する前には父の会社は倒産してしまった。
巨額な負債を背負い今までの裕福な生活は一気に極貧生活へと変わった。
そのあおりを受けて私も高校進学を諦め、進路を就職に変更しなくてはいけないと思っていた矢先に父の古い友人という人から学費の援助を受ける話が舞い込んだ。
ついでに一級建築士だった父はその友人の会社に就職する事が出来ていた。
つまりは父のその友人のお蔭で私たち一家は過酷な極貧生活から苦しいながらも普通の生活を送れるまでになった──という訳だ。
高校在学中、私もバイトをしながら少しは家計を助け、そして少しずつ借金を返しながら短大にも進学することが出来、先日なんとか就職先も決まり無事に短大を卒業していよいよ本格的に仕事を頑張ろう! と決意していた矢先に件の見合い話が舞い込んだのだ。
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