bittersweet 番外編(南春登の誤算)

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恋愛対象が男だった僕にとっては表向きはノーマルでありたいと思っていた。 しかしそれなりの容姿を持っていた僕にいい寄って来る女はうんざりする程多く、それを常々鬱陶しく思っていた。 彼女はそういった意味でもいいストッパーになると考え、彼女と表面上の交際を始めることにした。 交際といっても精々キス止まり。体の関係は持ちたくなかった。そのことに対して彼女も特に不満そうな感じを見せなかったために、微温湯のような交際は順調に進んでいた。 しかしもうじき交際一年になろうかという頃になって彼女は僕との関係に疑問を持ち始めた。 自分は女として見てもらえていないのではないか? 本当は本命ではなく他にも付き合っている女性がいるのではないか? そんな浅はかな疑問を持ち始めた彼女を徐々に疎ましく思うようになり、僕は思い切って自分は女を愛せないのだという事情を彼女に打ち明けた。 それを訊いた彼女は大層驚いたが、それでも女として自分だけを愛してくれるようにと僕に迫った。 今は愛せないかも知れない。 だけど月日が経てばきっと其処に愛情は生まれるからと散々僕に畳み掛けたのだ。 意外にも情熱家だった彼女にある意味新鮮さを感じはしたがこの手の一途な女は僕にとっては一番嫌悪感を覚えるタイプだった。
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