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だけど本当は一日中何をするでもなく屋敷にずっといることに少々飽いて来ていた。
私の気分転換にもなるし、源治さんにも見て愉しんでもらえるし、一石二鳥だと思って思いついた教室通いのお願いだった。
「此処から割と近い処に教室があるんです」
「……」
「ダメ…ですか?」
「……」
座っている源治さんの前に跪いて少し上目遣いでお願いしてみる。すると源治さんが仄かに頬を赤らめたのが分かった。
(あっ、赤くなった)
「俺は由梨子を見ているだけで癒されるが」
「……え」
「──まぁ、いいだろう」
「! いいんですか?」
「ただし週に一日だけだ」
「はい!承知いたしました」
私は嬉しさのあまり思わず源治さんに抱きついた。
「大好き!源治さん」
「!」
源治さんの頬に軽くキスをした。横目に入る源治さんの顔は益々真っ赤になっていて、それを見る度に(本当に可愛い人だなぁ)と思った。
──が
「えっ」
急に体が浮いて気が付いた時にはお姫様抱っこをされていた。
「願いを聞いた褒美をもらう」
「……」
(まだ昼間なのに)
明るい内からそんな事をされるなんて少しだけ非日常的な感じに思えてドキドキした。
「たっぷり頂くからな」
「……はい」
恥ずかしいけれどどうしたって源治さんと抱き合うことに幸せを感じてしまう私にはその甘い誘惑を断るなんて選択肢はなかった。
だけど私はまだ知らなかった。
良かれと思って通い始める教室でまたひと波乱起きる出来事が待っていようとは当然知る由もなかったのだった──。
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