bittersweet 第二章

3/36
7679人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「本日は体験教室にお越しいただきましてありがとうございます」 源治さんからお許しを得た生け花教室通いだったけれど、続けられるかどうか多少の不安もあったのでとりあえず体験レッスンから始めることにした。 時間が平日の昼間ということもあって、あまり同世代の人はいないように見受けられた。 最初に扱う花についての勉強をした。勉強なんて短大を卒業して以来だったから少し新鮮な気持ちになった。 元々花は好きだったし、何かを新しく知る事、知識を吸収する事が好きだった私はあっという間に生け花に興味を惹かれてしまった。 (すごくセンスを問われるけれど……愉しいかも) 二時間ほどの体験教室はあっという間に終わってしまった。 帰り支度を済ませ教室を出ようとした処で何人かで固まっている人たちの話が聞こえた。 「北原彩奈が此方の教室でゲスト講師をされるんですって」 「まぁ、本当?!それは愉しみね」 (…あやな?) それは私にとって酷く印象的な名前だった。 (あ、でも北原彩奈って確か今話題のカリスマ主婦って人だっけ?) 結婚してから読むようになった主婦雑誌によく載っている華やかなカリスマ主婦──それが(くだん)北原彩奈(きたはらあやな)だった。 (確かなんとかってサッカー選手の奥さんなんだよね) うろ覚えの情報で申し訳ないが、どうやらそのカリスマ主婦である北原彩奈が来週この教室で講習会を開くということらしい。 (凄いなぁ……来週、か) 体験教室はこの日限りのことだったのでもし来週も通うとなれば本格的に入会しなければいけない。 (なんだか生け花愉しそうだし…ちゃんと続けてみよう) そう思った私はその足で事務所に寄って行った。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!