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「お待たせして申し訳ありません」
「いえ」
入会に必要な書類や持ち物などの確認に訪れた事務所だったけれど先客がいたらしく事務所内は慌ただしくしていた。
「来週お越しになる時で結構ですので此方の入会申し込みの書類と受講料の銀行引き落とし手続きの書類、あと──」
色々な手続きがいるのだなと思いながら話を訊いた。
「それではどうぞよろしくお願いします」
「此方こそよろしくお願いします」
やっと説明を終えて事務所を後にした。
「…ふぅ」
一息ついて玄関へと続く廊下を歩いていた。するとマナーモードにしていた携帯が鞄のポケットの中で震え出したので慌てて取り出した。
丁度その時、後方からハイヒールの音が聞こえたので歩行の邪魔にならないように廊下の端に寄って電話に出た。
「はい──あ、源治さん?」
通話した瞬間、私を追い越して行った人からふんわりといい匂いがしたから思わず其方を見てしまった。
(っ!)
私の視線の先には何処かで見たことのある華やかで美しい人が何ともいえない顔をして此方を見ていた。
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