7725人が本棚に入れています
本棚に追加
「まさか──とは思ったけれど……あなた、おいくつかしら」
「…20歳、です」
「……」
(えぇっ!物凄く怖い顔になってる!!)
紙面では美しい笑顔しか観たことがなかったらまさかカリスマ主婦がこんな顔をするなんて思ってもみなかった。
「あなた…源治に騙されて結婚なさった?」
「え」
「何か政略結婚的な感じで、無理やり結婚させられたんじゃないかしら」
「…どうして」
「此方が質問をしているのよ、質問には答えで返して下さらない?!」
「!」
その激しい剣幕に行き交う人も何事かと私たちを見た。
「──失礼、源治のことになるとつい……荒ぶってしまっていけないわ」
「い、いえ…」
(ふぁぁ~ギャップあり過ぎ)
私は源治さんで見かけと中身にギャップがある人には随分慣れているつもりなのであまり大げさに驚きはしなかったけれど。
(この人が…源治さんの前の奥さん)
噂通りの華やかで美しい人だったことに納得しながらも、自分との違い過ぎる容姿に落ち込んだ。
彩奈さんはチラッと時計を見て「時間切れだわ」と呟きながら改めて私と向き合った。
「あなた──由梨子さんといったかしら」
「はい…」
「お時間、作ってくださらない?」
「時間?」
「わたし、来週此方の教室で講師をすることになっているの。それが終わってから少しだけお話、出来ないかしら」
「あ、はい…構いません」
「そう──じゃあ、そのように」
彩奈さんは一方的にそれだけを伝えるとそそくさとその場を立ち去った。
「……」
──まさか……
まさか源治さんの前の奥さんが……
(あの北原彩奈だったなんて!)
私は色々驚き過ぎてしばらくその場に茫然と立ち尽くしてしまったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!