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bittersweet 第二章
春の嵐のような怒涛の結婚騒動から早三ヶ月が過ぎようとしていたとある日。
「生け花教室?」
「はい、通わせてください」
「……」
私はすっかり伊志嶺家に馴染み、源治さんともかなり砕けて話せるようになっていた。
「庭に咲いているお花を活けたいんです」
「花なんて適当に切って花瓶に挿しておけばいい」
「それはつまらないです」
「つまらない?」
ほんの数ヶ月前なら強面の源治さんに口答えなんてとんでもないと思っていたけれど、今ではすっかり自分のいいたいことは口に出して言えるようになっていた。
(進歩したなぁ……私)
心の片隅でそんなことを思いながらも源治さんの説得を続ける。
「ただ花瓶に挿すだけじゃなくて色々な趣向で花を愉しみたいんです」
「……」
「きっと源治さんもそんな花を見て癒されると思います」
「俺?」
「はい。私、源治さんへの色んな気持ちを花に投影して活けたいんです」
「……」
その気持ちは本当。
嘘ではなかった。
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