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友達100人プロジェクト!
その企画名を聞いた時、俺はあっけに取られるしかなかった。いや、いくら春の新番組だからって。普通今時の若者が、そんありきたりかつ面倒くさい企画出してくるもんなのか?と。
「いいじゃないですかディレクター!やってみましょーよー!」
ポカーン、としている俺に、この企画が大成功すると信じてやまないのかあっさりと後輩の風祭は言ってのける。確かに俺は、ADもそれ以外の連中も面白そうだと思った企画はバンバン上げてこいとは言った。だからって、こんなとっくに昔のテレビ番組でやってそうな内容出してくるだろうか、普通。
「……一応聞くけど」
俺は頭痛を覚えながら、ニコニコ顔の風祭青年に告げた。
「うちの局の状況、分かってるよな?今季こそ視聴率上げないとマジで終わるんだけど」
「知ってます!オノテレビ、今ネットでめっちゃ叩かれてますもんね!すぐ危ないことさせるし、昔のノリを今のご時世に持ち込んで大失敗するし、スキャンダルが起きたと思ったら基本オノテレビだろーみたいな!!」
「……何でそんなに明るいのお前」
そうだ。今、オノテレビは大きな危機を迎えている。とにかく数字が出ない。ドラマは作ったはしから大外れし、先日は月曜十九時半からの枠でまさかの初回視聴率5%という大惨事だった。ゴールデンタイムである。今売り出し中の超大物女優に、高い金を払って出演して貰ったにも関わらずである。――原因はわかっていた。オノテレビそのもの信頼が、大きく落ちているのだ。
原因は挙げればキリがないが、昔の栄光を取り戻そうと時代遅れの派手で危ないバラエティーを繰り返し、挙句朝のニュース番組系では若者の好みを外しまくった特集をし――ようはそういうのが散々積み重なった結果だと言っていい。ドラマにしても、前回のドラマは脚本家を完全に選び損ねていた。なんでネタバレをTwitterでそうじゃんじゃん呟くのだ。挙句の果てに、LGBTへの露骨な差別発言をして大炎上しているのだから一体どうフォローしろというのだろう。――おかげで、今回のドラマは出来はけして悪くないのに、“どうせオノテレビでしょ”で見てもらえないという酷い有様が出来上がってしまったのである。
――そもそも、今の若い世代がゴールデンタイムにドラマ見るとか無理ゲーなんだよなあ。
お偉方の頭が古臭いのもどうにかならないものか。すぐに視聴率が視聴率がというが、そもそも平日のゴールデンで茶の間に座ってゆっくりテレビを見られる若者がどれだけいると思っているのやら。社会人は帰宅していないか、していてもまだバタバタしている時間帯。最近は専業主婦さえ少なくなっている。学生は学生で、運動部でバリバリやってる奴らもその時間帯にはテレビが見られる状態にないことも少なくない。
ドラマを見るなら録画かネット配信がメインになりつつあるこの現実を、いい加減上の方々も理解するべきではあるまいか。実際ネット配信での再生回数の方はさほど悪くもないのである。にも関わらずリアルタイム視聴率だけ見て“どうしてこうなったんだ!”と顔を真っ赤にして叫ぶのは本当に勘弁してほしい。パワハラか、パワハラなのか。
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