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「なんで明るいのって言いますけど、じゃあディレクターは暗く沈んで“これしかありませんでしたあ”って企画出された方がやる気出るんです?」
僕は無理ですねえ、と至極真っ当なことを言う彼。
「大丈夫ですって。一見使い古されたネタですけど、今のご時世で求められてるのは案外こういう方向だと思うんですよ。新しい時代に、パーっとみんなの気持ちが明るくなるような企画、やりましょうよ!」
「それが“友達100人プロジェクト”ってか?」
「ええ!春から始めるのにぴったりだと思います!」
手間がかかる割に、多方面から“児童虐待だ”だの“道徳心の押し付けではないか”だのクレームが来そうな内容である。しかし俺は、その企画にひとしきり眼を通して――しょうがないな、とため息とついたのだった。
実のところ。他にまともな企画を持ってきた人間がいなかったのである。
――まあ、どうせ落ち目のテレビ局だしな。やるだけやってみっか。
スリープしたパソコンの真っ暗な画面には、くたびれた四十過ぎのオッサンが映っている。まだ仕事をクビになったり左遷されたりなんてのはゴメンだ。だが、企画を出せなければ結局同じこと。どうせ落ち目なら、最後にバーンと弾けて終わるのもアリかもしれない。
そうして、俺はその企画を勧めることにしたのだった。正直、全く成功するとは思っていなかったのだけれども。
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