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最初は、やる気など殆どなかった企画。しかし徐々に俺は真剣にのめり込み、いつしかオノテレビのディレクターという枠を超えて村おこしに協力するようになっていった。
一人の女の子に、友達を百人作るため――村にたくさん人を呼び込むプロジェクト。
最初はぐだぐだ言っていた上層部も、またオノテレビがつまんねー企画やってるよ、と叩いていたネットも。まりあちゃんの一生懸命な様子と、村人達と番組スタッフ一丸になっての村おこしの様子が徐々に受けるようになり、少しずつ村の知名度と視聴率を上げていったのだった。
期限は一年。俺は本気で、村にたくさん子供達を呼んで、村のことが大好きなまりあちゃんに百人の友達を作ってあげたいと考えるようになっていた。――感謝するべきは、天真爛漫なまりあちゃんと。イケメンながら飾らない風祭の性格だろう。有名なタレントを呼ぶような金はなく、結局メインレポーターはアナウンス部をやった経験があるという風祭に任せることになってしまったのだが、これが案外良かったのである。地味に、風祭に本人にも注目と人気が集まりつつあった。――地味でヒゲのおっさんである俺には、けして出来ない芸当である。ちょっとだけ羨ましいがまあ、それはそれだ。
俺達は必死で企画を盛り上げ、時には自費さえも投資して村の為に尽くした。しかし。
「……小学校の児童数。結局、四十三人どまり、でしたね……」
心底残念そうに、風祭が肩を落とした。一年過ぎ、一年生だったまりあちゃんももうすぐ二年生になろうとしている春休み。桜も、再びつぼみが膨らみ始めている。観光客も増えたし、引越ししてくる家族もあったが――それでも、さすがに一年で児童の数を増やすのには限界があったのである。
勿論、友達、というのは村の友達でなくても問題ない。少し離れた隣村や隣町にも、まりあちゃんと交流のある子供は増えた。でも、それを含んでも精々八十人程度。百人到達には、大幅に及ばなかったことになる。
「……畜生」
こんなに――こんなに真剣にものに打ち込んだことが過去にあっただろうか。こんなに悔しい想いをしたことが、人生で一度でもあっただろうか。
まりあちゃんのために、絶対友達を百人作れるようにすると約束したのに。大人である自分が、約束を守ってあげられなかった。まりあちゃんがそのために、どれだけいろんな人と積極的に交流し、イベントを企画し、幼いながら必死で頑張ってきたことを知っているから余計に悔しくてたまらない。
一年で終わる約束の企画だった。そこまでどうにか伸ばして貰ってここまできたのである。――俺は最後の撮影のため。同じく悔し涙を滲ませるスタッフ達を連れ、○○村へ向かったのだった。
けれども。――学校で待っていたまりあちゃんに言われた言葉は、予想外のものだったのである。
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