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とは言いながらも、どうせ寝て起きた時にはすっかり忘れている。毎回毎回そうなのだ。翔宇の約束が守られたことは殆どない。いつものことだから気にしてないが、真剣な顔で言われるとつい期待してしまう。
俺が適当に頷くと、翔宇の顔が途端にデレデレとした表情に変化した。
「響希に焼き肉いっぱい食わせて、酒もガンガン飲ませて、潰れたところを襲ってやるぜ」
俺の方へ体を倒してくる翔宇をうんざりしながら片腕で押し返す。ついでに今にも翔宇の手から滑り落ちそうになっているグラスを慌てて奪い取り、テーブルに置いた。
「なぁ響希、俺相当我慢したよ? そろそろいいだろ」
ソファの上であぐらをかいた翔宇が、お預けを喰らった犬のように肩を落として上目に俺を見つめる……が、その手には乗らない。
「いいから早く着替えて寝ろ、酔っ払い」
「酔ってねえよぉ。響希とエッチしたい」
何よりもそんな台詞を吐くのが酔っている証拠だというのに。
「散々ヤッてきたんだろうが。それに明日どっか出かけるんだろ? 起きれなくなるぞ」
そうだ、と言って翔宇が俺の膝に手を置き、そのまま内股を撫で回してきた。とんでもなく嬉しそうな顔をしているが、その理由はだいたい予想がつく。
「響希も明日、仕事終わったら俺と一緒に来いよ」
「どこへ?」
「最近仲良くなった、他の店の子の家。超可愛いんだぜ。それも十八歳」
俺は少しの間沈黙してから翔宇の手を払いのけ、灰皿に煙草を押し付けながら首を横に振った。
「行かね」
「なんでよ。たまには響希も若い子と遊ばねえと。オッサンばっかり相手してたら、あっという間に老けちまうぞ」
「………」
「若くて健康な時なんてすぐ終わるんだ。この仕事始めてから改めて思うようになったけど、若さには期限があるんだぜ、響希。しかもかなり短い期限だ」
こいつは分かったようなことを言いながら、実は何も分かってない。
若かろうが老いてようが、俺は翔宇と一緒にいられればそれで満足なのに。
「とにかく考えといてくれ。マジで俺のお勧めの子だから、響希も絶対気に入るって」
「気に入ったところでどうしようもねえだろ、そんなの」
翔宇がソファから立ち上がり、シャツのボタンを外しながら歯を見せて笑う。
「いいから楽しみにしとけ。そんじゃ明日、仕事頑張ってな」
「ん。おやすみ」
リビングに一人残され、俺はソファの上で膝を抱えて目を閉じた。
俺達はいつからこんな関係になってしまったのだろう。初めはもっと、普通の友達として互いに接していた。それなのに、いつの間にか同じ男を抱くこともできるようになってしまったし、それに対して俺も何も思わなくなってしまっていた。
さっき翔宇が嬉しそうに言っていたのだって、早い話が3Pの誘いだ。それ自体は今どき珍しいことじゃないのかもしれない。だけど俺は、思わずにはいられなかった。
──セックスってそんなに軽いものだったか。
「………」
あの頃は、俺達がこんな関係になるだなんて考えたことすらなかった。
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