PROLOGUE:01 夢見心地の妖の狂宴

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PROLOGUE:01 夢見心地の妖の狂宴

 満員御礼のライブ会場で、燥いだ笑い声や騒がしい声や衣擦れの音がする。あちこちで、グラスのぶつかる音、食器の立てる生活音が一緒くたになり、賑やかにさざめいていた。  はっと息を飲むような一瞬の沈黙の後から高い歓声と陽気な口笛と期待を孕む熱気に、瞬く間に辺りは包まれ、しんと静まり返る。  暗いホールを見下ろすようなスタンド席で女友達とアペリティフを楽しんでいるMeg(メグ)はカウンターテーブルに冷たいグラスを置き、隣にいるAlicia(アリシア)、そしてKeira(キーラ)を振り返った。 「始まるみたいね」  グッズのバンドTシャツのロゴを撫でて、妙に得意そうな仕草でやんちゃに笑うKeira。澄ましたAliciaが緩慢な仕草で舞台を仰ぐ。 「待ってました!」 「とうとうだね?」  引き絞るように照明が暗くなると同時に、ホールは優しいオレンジ色の光に包まれた。夕暮れ空を飛ぶ鳥を思わせる羽音や鳴き声のBGMが、観客の鼓膜を優しく震わせる。  まるで癒しのフュージョン音楽のような、郷愁のSEがフェイドアウトしていく最中に、箱型のステージの段幕がゆっくりと開いた。  ごくステージに近い観客から荒波のように踊るような驚喜の叫び声と、喝采が起こって、黄色い声がバンドメンバーを呼ぶ声が止まず、間断的に、あちこちで口笛や指笛が鳴り響く。 ──さあ、(うたげ)の始まり始まり。
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