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「そう、ひよこの絵。私、描くもん持って来たのよ。これに描いてね。」  言いながら表紙に国語と書かれた使い古しのノートを健太に渡す。  健太はノートを手にしながら、「いいのか、勉強用のノートに落書きして?」  石田さんはうふふと含み笑いをして、「落書って川上君、ちゃんと描くとこあんのよ。ノートの前見返しに描いて欲しいの。」  健太は表紙を捲ってみて、「こんな所に描かせてどうするんだよ。」 「どうするって」と石田さんは言うと亦、うふふと含み笑いをして、「見て楽しむの。」  健太は首を竦めて赤面する石田さんに曰くありげなものを感じつつノートを机に置いて、「見て楽しむって、いつ楽しむんだよ。」 「いつ楽しむって」と石田さんは言うと亦、うふふと含み笑いをして、「だから授業中に・・・」 「授業中?石田!学校に何しに来てるの?」 「だって、授業に飽きちゃうんだもん。だから時たま見て楽しむの。」 「石田って、だから頭悪いんだな。」 「煩いわね!ほっといてよ!」と石田さんは怒った後、「あっ、しまった、怒っちゃった。」と言うや、ぺろっと舌を出す。  健太は一笑してから訳知り顔で、「本性を現したな・・・」 「もう!川上君!意地悪ばかり言ってないで、お願いだから早く描いてよ!」 「ああ、そうだった。」と健太は答え、机に向かうと筆箱から鉛筆を取ってノートの前見返しに米粒大のひよこの絵を描き出す。 「あー!駄目よ。そんな小っちゃく描いたら・・・ほんとに意地悪なんだから・・・紙一面に描いてよ!」 「ああ、悪かった。」と健太は答え、今度はにやにやしながら前見返し一面にうんこの絵を描き出す。
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