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まさかの展開に石田さんは最初、何、描いてんだろう?と見入っていたが、うんこだ!と分かるや、例の吊り上がったぎょろ目を更に吊り上げ、「ちょっと何、描いてんのよ!川上君!ふざけないで!」と叫ぶが早いか、健太の左三角筋を平手で強か撲った。
「いってえ!」
健太はそう叫ぶなり石田さんの腕力の衝撃で左肩から上体が崩れ、机上に突っ伏しそうになり、その拍子に鉛筆を持っていた右手で机上の右隅に置いてあった筆箱を突き落としてしまった。
「あー!大変!大変!」と石田さんは殊更に驚き騒いで見せて慌ててしゃがみ込み、床に落花狼藉した鉛筆やマジックペンや物差しや消しゴムを筆箱に戻し、蓋が開いた儘、筆箱を持って立ち上がると、うんこを書かれた手前、余り悪怯れた様子もなく筆箱を机上に無造作に置き、体裁を整えてから言った。「ごめんなさいね、鉛筆の芯が何本か折れちゃった。」
「ああ、そんなのは構わないよ。鉛筆削りで削れば良いだけの事だから。」と健太がうんこを書いた手前、右手で左三角筋を押さえ痛がりながらも許す事にすると、「まあ!」と石田さんは感嘆の声を上げ、両手を胸の前で組んで、「川上君、何も咎めないの!」と言って殊更に感心したポーズを取って見せ、健太が猶も右手で左三角筋を押さえ痛がりながらも、「ああ、高が鉛筆の一本や二本。」と言うと、今度は組んだ両手を胸の前で左右に振りながら、「まあ!流石、川上君!心が広いわ!」と尾鰭を付けて更に感心して見せ、健太が右手で左三角筋を摩りながら、「へへへ、何かにつけて煽てて好い気分にさせてくれるんだねえ。でもさあ、肩が痛くてしょうがないんだよなあ。」と言うと、今度は組んだ両手を口の前に持って行き、拝む様なポーズを取って、「あー!ごめんなさい!」と謝り、「私、つい怒っちゃって力が入っちゃったの。」と言い訳して両手を左右にすっと下ろし、腰をさっと折って健太の顔に浅黒い顔を急接近させ、「そんなに痛かった?」
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