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 可愛子ちゃんであれば、自分でも顔を近づけて行き、あわよくば其の儘、唇を合わせてみたい所であるが、健太は石田さんに対し同極同士で反発する磁石の様に首を後ろにさっと反り返らせ、相変わらず右手で左三角筋を摩りながら、「そ、そりゃあ、痛かったよ。僕さあ、あんまり痛かったんで一瞬、脱臼したかと思ったよ!」と言うと、石田さんも健太に対し同極同士で反発する磁石の様に前にのめっていた上体を後ろに大きく反り返らせ、体全体を海老ぞりにして時代劇に出て来る万夫不当の荒武者みたいに、「アッハッハッハ!」と豪放磊落に大笑いした後、ぎょろ目で健太を見つめながら、「またあ・・・川上君ったら・・・大袈裟なんだから・・・」とぽつりぽつりと呟く。 「いや、大袈裟なもんか!掛け値なしに石田だってゴリライモみたいにほんとにほんとにすんげーすんげー怪力してんだなあって思ったよ!」 「もう、川上君ったら・・・心にもない事を・・・意地悪ばっかり・・・連発しちゃって・・・」と石田さんが更にぎょろ目で健太を見つめながら、ぽつりぽつりと呟くと健太はぎょろ目に威圧されながら右手を左三角筋から放して顔の前で左右に振りながら、「いやいやいや」と否定した後、右手を人差し指だけ伸ばして握って顔の前で前後に小刻みに振りながら、「これはね、石田、意地悪で言ってるんじゃないし、心にもないも何も本心から言ってるんだよ。」と偽らざる心情を吐露してから右手を左手と同様に膝に付いて、「大体さあ、石田ってさあ、男みたいに気性が荒い所があるしさあ、序に言えば、色は黒いわ、腕は太いわ、おまけに眉毛も太いときたもんだ!さてさて果たして君は一体全体、ほんとに女なんでしょうか?それとも実は男なんでしょうか?ねえ、どっち?」とつい悪乗りして決定的な意地悪を言った。
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