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 而して健太の中学二年の春も光陰矢の如しであっという間に終わりを告げようとしていた或る日の昼休み、遂に臍を固めた石田さんは健太の席に寄って来て然も馴れ馴れしい態度で呼び掛けた。 「ねえ、川上君!」 「ああ、何だい?」  さり気なく受け答えをする健太に石田さんはやっぱり他の子とは違うわと思いつつまずは彼を煽てて和まそうと話し出した。「こないだの数学のテスト、100点満点だったでしょ!凄いわねえ~」「いや、僕、90点!」「それで川上君ったら皆に自慢気に見せびらかしてたでしょ!おまけに皆にちやほやされちゃって、羨ましい限り!私も一度で良いからあんな良い思いをしてみたいわ!それにしてもあんなに難しい問題ばかりなのにあれを全部解いちゃうなんて信じられない!私からしたら神業としか思えないわ~」「もしもし、100点じゃないんだけど!」「だって、私ったらさあ、元々ハクション大魔王みたいに算数が大の苦手でごじゃるから正直に言っちゃうけど30点だったのよ」「もしかして赤点じゃないの?」「私って駄目ねえ~そこへ行くと川上君は確か~」「もしもし、聞いてるでしょ!」「昨日の体育の短距離走なんかでも一等賞だったでしょ。凄いわねえ~」「もしもし、二等賞なんだけど!」「ほんとに凄いの一言!実は私、『川上君、頑張って!』って、ずっと影ながら応援してたのよ!でも、私ってやっぱり駄目ねえ、どうしようもなく足が遅くって、あ~」「♪もしもし、かめさん!」「やだやだ、運動出来ないわ、勉強出来ないわ、おまけに女の子なのに裁縫も料理も下手で、序に言えば、絵も下手糞、あ~」「そんなに卑下しなくても・・・」「やだやだ、そこへ行くと川上君は凄いよねえ、いつかの絵のコンクールでも金賞取ったでしょ!すっごい!すっごい!」「あの、僕、銅賞、どうしよう・・・」「すっごい!すっごい!私、学級新聞見て知ったんだけど大したものねえ~」「どんな目してんだよ!」「だって百点、一等賞、おまけに金賞でしょ!」「だから煽てる為に鯖読むなって!」「すっごい!すっごい!何しろ感心しちゃう!すっごい!すっごい!」「だからそんなに煽ててんでもええっつうに!」「すっごい!すっごい!あっ、そうそう、絵と言えばさあ、さっき、菊江君にガンダムの絵、描いてあげてたでしょ!」
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