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ツイッターを眺めながら、彼女が呟いた。
「でも変化って、そんなに怖がったり喜んだりするものなのかな?」
「どうして?」
「ありふれているものじゃないか」
彼女の傍に置かれた、電池を入れ替えたばかりの懐中時計。相変わらず秒針を刻み続けている。
「……そうね。でも皆きっと忘れてしまうんだよ」
「そっか。確かに僕らも忘れたもんね。……いやなくしたのか。もう変われない」
「そうね。……そうね」
「きっと境目があるから、皆は思い出せるんだ」
「……時代の境、ね」
私は、ベルリンに殺到した人々が歓喜の表情で壁を壊す映像を、鮮明に思い出していた。全世界の人たちが、共有していたあの鮮烈な時間。思えば世界の距離は、時間は、とても近くなった。異国に渡った人なら誰でもわかるが……それでも、世界は広い。狭くなる日は来るのだろうか。
リビングのテレビをつける。番組はどこもかしこも、振り返りに忙しい。
「100年後の世界は、いい方向に変わるかな」
「それは……」
そう言って、セシルは砂の入っていない砂時計を見た。
「時間を持つ人たち次第かな」
「私達はもう時間の外だから」
「そうだね。時間を持っていないから」
「彼らの仕事ね」
「そうだね」
2人の視線の先には、街頭インタビューに笑顔で答える、若い女性が映っていた。
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