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「さ、最後はここにあるボールが一瞬で消えますっ! この中にいる誰かの手に入りますからね!」 僕は隙間から何とか手品を見ていた。 今まで見てきたけどホントにすごい手品だらけだった。 「行きますよっ、1、2、3!」 ステッキを彼は振った。 ボールは消える。 おぉ、と歓声が上がる。 あれ? 何か僕の手に変な感触。 手を開いたら。 ボールがある。 「あ、ボールが僕の手に!」 パチパチ、と拍手が僕を包んだ。 彼はシルクハットを取って頭を下げた。 「俺、さっき話したけどなぁ」 彼はシルクハットを脱いで隣に置く。 僕は、1回だけという条件で手品師の彼に話を聞くことが出来た。 「すまん、こいつが聞きたいって言ってきかないんだよ。」 安田刑事が呆れている。 「でもなぁ」 「そこを何とか!お願いしま」 「君っ。 ・・・ものすごい血の匂いがするね」 彼は、満面の笑みで僕を見た。 背筋が一気に凍ったような、感じだ。 「ぼ、僕は・・医者ですから」 「・・お医者さんかぁ。そうかあそうかあ」 また、満面の笑みだ。 何だこの人。 ・・怖い。
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