半分先の笑顔

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半分先の笑顔

 それは、春雷の鮮烈さとマスキングテープを引っ張る音を合わせて、綺麗に裂けた。真っ二つに分かれた白の奥から、驚きに満ちた双眸が現れ、数秒、私は彼と目が合った。見られた。いや、見られても構わないと覚悟をして中庭へ来たのに、なぜ動揺しているのだろう。  私は心臓が爆発しないように、胸元に紙袋を押しつけて乾いた庭土の上から逃げ出した。初夏の日差しはやけに眩しく、どの生徒も揃って目を細める。だから、俯いたまま中庭から校舎へ戻っても、不審に感じる人はいないだろう。そう思いながら、私は自分の席でそっとため息を吐いた。よりによって、後の席の真尋に答案用紙を破る瞬間を見られるなんて、背中がむず痒い。私は彼の気配を受け止めながら、早く放課後になるように祈るばかりだった。
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