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心の鎖
河から離れ、パルサとグドは別の町へ向かう。
元々、大した目的のある旅ではない。
気ままにのんびりと、だが確実に目的を果たせばいいだけの旅なのだからーー。
「母様……」
風がパルサの言葉を掻き消し、独白を奪う。
耳鳴りに似たけたたましい暴風音がパルサの全神経に伝わり、パルサは自然に身を任せようと目を閉じた。
ーーすると。
「う”」
「! グド?」
グドが己が着ていたマントをパルサに掛けていた。
強風は身体に悪いと知っているのだろう。
優しい彼の心遣いに、パルサは自然と笑みを浮かべ、彼の腕を撫でた。
「必ず、治してやるからな」
治す手立ては見えた。
けれども、パルサはできるだけ自分自身の力で彼を治療してあげたいと思っていた。
それが、彼の命を拾った自分の責任だと思っているからーー。
「行くか」
「う”!」
嬉しそうに身体を縦に振るグドを背に、パルサは歩き出した。
次の町を目指してーー。
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