王宮編

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 辟易した表情を隠しもせず、近衛長のクロエはリィンの執務室にやってくると報告を始めた。頬と首には引っかかれた痕が幾筋もあり、手にもそれが見て取れる。 「ご用命の通り、マムフェ殿をリィン様の青瑠宮へ連れていきましたが、当人が混乱と錯乱状態であるため、甘露を使用しました。今は静かに眠っています」  リィンは執務室の机に面した椅子に腰を下ろしたまま、筆頭近衛の様に苦笑をもらした。 「ご苦労。しばらく甘露を使用して行く事になるだろう」  机の引き出しを開けると、中から小さな小瓶を取り出し、クロエへ抛る。上手に受け止めた近衛にリィンは告げた。 「傷に塗っておけ。それから、ライセンも恐らく暴走状態になるだろう。あれが私の宮殿に忍び込んでくることは、十分に考えられる。警備の強化をせよ。侵入の際には容赦なくこれを捕縛してよい」  遠慮なく瓶の蓋をあけ、机に置いてから薬を塗りつつクロエが面倒そうにため息をついた。 「ライセン皇子は腕もたつ。そのうえ王族ともなれば、本気で立ち向かえる兵も少ないでしょう。近衛の者たちを動員しても、人が足りないですよ」 「わざと穴があるように見せてやればよい。どうせ頭に血が上っていて、まともに考えることもできまい。私の宮殿門をわざと手薄にしてやれ。中に入ったらすぐに禁域侵入罪で捕まえればよい」  首の傷にうまく薬が塗れていないクロエへ、リィンが自分の首元を示して傷跡を教える。  素直に言われた通り、首元に塗りながらクロエはため息をついた。 「コミュニティの武闘派を貸してください。彼らなら捕縛するにしても間違いない仕事ができるでしょうし」 「いいだろう。何人か見繕いお前の所へ行くようにしておこう」  傷に薬を塗り終えたクロエが、瓶を返してきたのを受け取りリィンは引き出しにしまった。 「ライルをメンバーに入れてやってください。これで彼のつかえも取れることでしょう」 「そうだな。ただし、彼が必要以上に責任を感じ無理な事をしでかすようなら、きちんと制するように」  ライルは実直で素直な男だった。トゥーンを心配したのも本心だろう。しかし、失敗した己を責めているのも明白だった。まじめな男だからこそ、使うものには責任が求められる。 「承知いたしました。所でカイネスはどこにいるのですか?」  リィンは立ち上がり、執務室の右側にある簡素な扉へ向かっていった。 「学舎へマムフェの荷物を取りに行かせている。アスランもこちらに戻さなくてはいけないし、彼はもう学舎には戻れないからね」  元々執務室はこの倍ほどの広さがあったのだが、この壁と扉を後から強引にしつらえたため、天井の絵などはきれいに半分になってしまっているありさまだった。  扉を開いた先は、珍しく光がない暗い空間だった。リィンは躊躇することなくその部屋に入りつつ、びっしりと立ち並んでいる戸棚から一つの瓶を取り出す。  甘露。  それは西の奥地で採られる果物から、抽出されるものだった。果物そのものは甘く、芳香もかぐわしく黒の者たち以外がこぞって食べてもさしたる害はない。  だが、個数を多く食べると、まっすぐに歩けなくなり思考も安定しなくなり、傾眠傾向が出る。  リィンはこの果物を種と果実に分け、果実の部分を実に細かく切り、水と混ぜて果肉を絞り濾した。濾過された果汁と揮発液で合わせ、これを攪拌する。何度か塩を加えたり、酸を加えたりしてろ過するうちに、液体は変化していく。最終的には揮発油を加え、上層、中層、下層をそれぞれ別け、下層の部分から水気が蒸発するのを待つとこの白い粉が残った。  この粉を水に溶かし、黒の者が飲めるのか自分の体で実体験した後、彼はこの粉を一定量溶かした液体を『甘露』と名付けた。  黒の者でも飲むことが可能であり、その水は甘く、飲めば思考能力に影響が出るうえ、傾眠傾向となるが同時に多幸感をもたらす。  どこまでの量が使用可能か囚人を使った人体実験を繰り返し、実用化したものだった。  このように、王弟の宮殿には普段あり得ない独特のものが存在している。  彼のコミュニティは事実上、彼を支える技術者や武闘派、頭脳派の集まりでありこの国の粋を極めた者たちだった。  彼を恐れ、怪しみ嫌う人々も多くいたが、逆に心酔し尊敬する者たちも多い。何よりこの美貌は、恐れ多くもかしこきあたりと言わしめるものがあった。  王ははるか昔から、この弟を恐れ嫌っていた。長子だからこそ、王になるのが当然ではあるが、弟のほうが真の王よりも王らしいではないか。それは臣下から幾度となく漏れ聞こえる言葉であった。  子供を5人も作ったのは、弟の王位継承権を下げるためでもあっただろう。必死で自分の周囲を囲っている王を、リィンはいつも冷めた目で見つめていた。  暗い中、扉を開けたままの光だけで天秤をあやつり、粉を一定量取り出すと、苞にして胸元へしまう。  慣れた手つきで瓶を棚に戻すと、リィンは部屋に戻ってきた。  主君の動作を見つめていたクロエは、ふと気になっていた質問をした。 「マムフェを引き取ると決めたのは、いつですか?詮議に出され同情してこのようなことを?」  リィンは成人の時、自分のコミュニティを立ち上げただけで、特定のパートナーを作っていない。トゥーンは自身の定めた女性と作った子供だったが、個人コミュニティにいれていない。現在、その女性とも縁が切れているなど、蓋を開けるとすこし違う事情が見えてくる。  リィンが個人のコミュニティを使用したのは、初めてのことだった。実質上、初の名実たるパートナーである。 「天命術の定めによる所だ。彼は私の運命の相手なのだよ。まさかこのような形でパートナーになると思ってもみなかったが。彼は私が生まれたときから30年、待ち続けた愛しき唯一の相手だ。若すぎるから時を待っていたのだが」  さすがの近衛長も驚いた表情を浮かべた。 「まさか…」 「そのまさかだ。彼は私のすべてを引き継ぐことになるだろう。心せよ」  半ば茫然としていたクロエは表情を改めた。 「承知いたしました」  それはマムフェがこの、知恵を集めた宮殿の主たる可能性を示していた。  マムフェは、暖かい湯の中にいた。目を開けると、美貌の男が静かに自分を見下ろしている。 「あなたは…」 「リィンだ。これから私のことはリィンと呼ぶように」  頭の中で声が反響し、思考が千路に乱れる。それでも、言い含められたことは、落ち着いてそこに残っていた。 「リィン、さま」  男は満足そうに笑うと、湯の中でマムフェの体を触った。  自分でそこを触ったことはない、それでも性的に関係すると知っている場所だった。 「皮をむいてしまうよ。少し痛いかもしれないが、いい子にしておいで」  言われた後、下半身にぴりりという痛みが走った。それさえも、とろとろとどこかにすぐ消えていく。違和感は薄く、眠りのふちが直ぐそこまで来ていた。感覚は下半身で続いている。それでも、眠さが勝った。  たぷん、と水の中に落ちていくように、マムフェは眠りの渦へ身を投じていた。  目が覚めた時、マムフェは重くて身体が思うように動かなかった。それでも、こみ上げてくる感覚に我慢が利かず、身を起こす。  くらりとした身体を起こし、必死であたりを見回す。まるで知らない豪華な部屋に自分は寝ていた。光はところどころに作られている天窓から、芸術的に降り注ぎ、磨き上げられている床は眩しいほどだ。  華美な装飾とするよりは、美しく落ち着いた趣味の良い部屋だったが恐ろしく広い。ソファとテーブルセット。彫刻や鏡、絵画。そして自分の眠っているベッドはとてつもなく大きかった。  大の大人が平気で4人は眠れそうだ。そこに、リィンは眠っていた。  リィンさま。心の中で彼の名前を反芻してから、マムフェは我慢できない重たい体を引きずってベッドから立とうとする。  途端に、手を掴まれた。  熟睡していると思っていたリィンが目を覚まし、マムフェの手を握っていた。 「どうした?」  問いかけに、マムフェは真っ赤になると逡巡して視線をさまよわせる。思考は千々に乱れてうまくまとまらなかったが、身体の変調だけは切羽詰まっていた。 「湯殿に行きたいです」  訴えると、リィンがああというように笑う。 「おいで、出したいのだろう」  湯殿に連れて行ってくれるのかと思ったマムフェに対し、リィンはベッドの上にマムフェを乗せた。そして、股の下に懐紙を何枚も重ねたものを置く。 「これは、一人で出してはいけないのだよ。もちろん、私以外の誰かに頼んでもいけない。私に、出してくださいとお願いするものなのだ。きちんと覚えるように」  言い含めるように告げられ、違和感のもととなっていた尻へと指先を這わせられる。引っ張り上げられ、四つん這いになっていたマムフェは、初めてここで自分の性器をみると驚いた。  今まで包皮に覆われていたのが、むき出しになってぷるりと丸い頭がのぞいている。ピンク色の生まれたての粘膜は、心なしかちりちりと痛んだ。  それよりも、自分の中にある得体の知れないものを出したかった。  この世界の者は、当然ながら排泄を行わない。黒の者たちも、茶の者たちも、銀の者であろうとも排泄をしない。  忌餌を食べる者たちはきれいに全て吸収してしまい、マムフェが違和感を覚えている場所は全く使用されないのが当たり前だった。  それが、ひどく重く、出してしまいたいという感覚に襲われている。生まれて初めての感覚だった。 「出したいです…」  マムフェが訴えると、アナルをつるつると撫でていたリィンはかすかに笑った。 「どうしても?」 「お願いです…」  違和感に涙目になって、マムフェが訴える。 「では膝立ちになってごらん。出してあげよう。よく我慢したね」  リィンの言葉に、マムフェは一も二もなく従った。懐紙の上に膝立ちになって、全裸のままリィンを見つめる。ここでマムフェは全く気付いていなかったが、リィンも全裸だった。 「私の肩に手を置いて、身体を支えるといい」  言われたとおりに、肩に手を置く。リィンはゆっくりとマムフェのアナルに指を含ませた。途端に、ポタポタと中から香油があふれ出る。暖められた香油は艶やかな花の香を漂わせ、あとから、あとから絶えることなくあふれ出してきた。 「あぁ…」  香油が出ていく感覚に安堵を覚え、マムフェが声をこぼす。 「いい子だね。かき出してあげよう」  指が中にずるりと入り込み、くちゅくちゅと香油をかき出すようにマムフェの中を探り始める。  ぐちゅぐちゅとかき混ぜられるたびに、マムフェは香油が出ていく安堵感に溺れた。気づくと指は二本になり、中をこねて広げている。  広げられると、ぽたぽたと香油が垂れる感覚が、気持ちよい。 「ん…あぁ…」  指は、性器の裏側になるあたりをぐいぐいと押す。そのたびに、どこかじぃぃんとした、何かが出そうな感覚が訪れる。  ずちゅくちゅと中をかき混ぜられるたびに、じんわりと甘い感覚が訪れた。たまらなくて、声が漏れる。ぬちぬちと入ってくる指を身体が追い始めていた。  もっとさすってほしい。声にならない懇願は、身体の素直な反応となりリィンの指をくちっと粘膜が狭まり味わう。  ああ、気持ちがいい…。しびれるような良さがそこにはあった。  小半時(30分)も嬲られていただろうか。  やがて、香油が完全に垂れなくなるとリィンは指を抜いた。 「あ…」  抜かれてしまった指に喪失感を覚え、マムフェは声を漏らしていた。 「いい子だね。全部出たよ。さあ、四つん這いになってごらん?」  香油を吸って、どっぷりと湿った懐紙をリィンは捨てると、マムフェを促す。マムフェは乱れた息のまま、素直に四つん這いになった。 すると、リィンが立ち上がり、どこかへ行ってしまう。それだけで何処か不安になったが、マムフェは言われた通りその姿勢のままベッドで待っていた。  やがてリィンは戻ってくると、香油に濡れてほころんでいるアナルに優しく触れた。 「あ…」 「いい子に待っていたご褒美をあげよう」  ほころんだアナルに、丸い大きな何かがぐっと入れられる。油にぬめったそれは、ずるん、と難なく飲み込まれた。 「おいしそうに飲み込む。もっといれてやろう。力を入れてはいけないよ」  また訪れたアナルの違和感に、力を入れかけていたマムフェはおとなしく緩めた。  づぷん。  づぷん。  つぷん…。  そして、あと一つ。最後の一つを入れるとリィンはぐっと指先で奥まで押した。 「あぁぁぁぁ……」  中へ押されていく感覚に、マムフェが声をこぼす。 「いい子だ。これをお飲み。甘露だよ」  マムフェの口元に、注ぎ口が出される。何の疑いもなくマムフェはそれを咥えた。中から甘い水が出てくる。すべて飲み込むと、リィンはいい子だというようにマムフェの顔を撫でた。 「中のものは、私が出すまできちんと我慢するのだよ」 「はい…」  ごろごろとした塊がある。とろとろとした眠気がすぐさまやってきた。  力が抜けて、こてんとベッドの上に転がる。そのマムフェをリィンは優しく抱き寄せ、眠りに落ちた。  マムフェが再度目覚めたとき、リィンの姿はもうなかった。身体の違和感があり、浅く息を吐く。  出したい…。  けれども、リィンが来なければ出してはいけないと言われている。千々に乱れた頭の中は、言いつけと出したいという葛藤で一杯だった。  ベッドのシーツを握りしめ、浅い息を繰り返してリィンを待つ。  早く来てほしい。出したい。出したい…。  涙さえこぼれ始めたとき、部屋の奥からリィンが姿を見せる。マムフェは歓喜を感じて震えながら上半身を起こした。ベッドのそばにやってきたリィンに半ば抱き着いて懇願する。 「出したいんです、出させて…」  リィンは涙交じりに懇願してくるマムフェの目元に、そっと口づけると美貌に笑みを浮かべて褒める。 「よく我慢したね、いい子だ。さあ、膝立ちになってごらん」  懐紙を置かれた場所に、マムフェは膝立ちになる。ベッドに乗ってきたリィンの肩に手を置き、出せる興奮に震えた。  ぶるりと震えたマムフェの尻をつるりとなで、じらすようにアナルを撫でると少年は泣いた。 「お願いです、出させて…」  皮をむかれたばかりの性器は、ぷるぷると震えて無垢そのものだった。前の感覚も何れ教えていかなければならないだろうが、皮をむいた後はむき出しの粘膜が痛む。 「では出させてあげよう」 指を差し入れてもらいたくて、震えるアナルに、つぷりと挿入する。 「あぁぁ…」  香油がぽたぽたと落ち始めると、マムフェは陶酔の声を上げた。すぐさま二本の指で、中を広げるように入口を開く。  素直に粘膜はピンク色の内側をさらした。中からぽたぽたと香油があとからあとから、滴り落ちていく。マムフェは出ていく安堵に、体を震わせていた。  指が中に入り、かき出すように動きはじめると促すように、肉筒がきゅっと締まりリィンの指をしゃぶる。さらに奥を探られると身体が震えた。  たまらない。気持ちがいい。 「あぁ、あぁ…」  ずちゅずちゅと音をたてながら、中を抉られるたび香油を垂らしながらマムフェが切れ切れの歓喜の声を上げる。  じっくりとある一点を二本の指で刺激すると、のけぞりながらマムフェは震えた。  そこをさずられると、甘い波がおしよせ性器から何かが出そうになる。じぃんとしびれるような気持ちよさがあるのだ。  もっと、さすってほしいと無意識にマムフェは腰を揺らめかせた。リィンはその媚態に、微笑し無言のおねだりを聞いてやる。  中を馴らすように、じっくりと蹂躙し、広げていく。長い時間をかけて香油に濡れた肉筒を弄ばれ、マムフェは悶えながらも香油を垂らした。  中をさすられ、広げられるのがこんなに気持ちいいのかと、リィンの指に耽溺する。  内壁を指で広げられると、腰の奥が震えるほどに気持ちがいい。ばらばらと動く指が壁を擦るたびに、甘い快楽が押し寄せた。  マムフェの感度がよくなってきているのが、リィンには手に取るように解った。 指を入れれば、マムフェは声を出してすすり泣いた。ぐちゅぐちゅと揺さぶれば、涙をこぼしてリィンの指を奥へ奥へと飲み込もうとする。素直な身体だった。  ぷるぷると身体を震わせてしゃぶっていたアナルから、リィンの指を抜き出す。 「ぁっ…」  途端にマムフェは喪失感の声を上げた。 「四つん這いになって待っておいで」  懐紙を捨て、リィンが言葉を残してベッドから離れる。出したいという感覚がなくなった下半身は甘くしびれていた。のろのろと身体を動かし、甘い息を吐きながら四つん這いになる。 「いい子だね、中が寂しいだろうから、香油玉をいれてやろう」  戻ってきたリィンがすっかり柔らかくなったアナルに、香油を練り固めた玉を入れていく。マムフェのアナルは、前回よりも素直に飲み込んだ。  内部に大きな塊の感覚が、ずるりと入り込んでくる。それはじぃんとしびれた下半身を溶かすような、甘い重さを持っていた。  ゆっくりと玉を5つ飲み込ませ、ぐっと奥までリィンが押し込む。内部を開かれていく圧迫感と、リィンの指が再度入ってきた喜びに身体が震えた。  喘ぎをこぼしたマムフェに、リィンは満足そうな視線を向けて指を抜き出す。差し出された甘露を、マムフェは素直に飲み干すと、また眠りに落ちていった。
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