『官』の多い女の子 3

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『官』の多い女の子 3

バーベキューからしばらく、紗也に、「お願い!」とせっつかれた美和は持ち前のコミュ力で男の子達とラインで連絡を取り、花火大会の当日、大学の最寄り駅で6人で待ち合わせして一緒に行く事にした。 紗也達は折角なので気合を入れて浴衣を着た。髪もアップにして浴衣用の髪飾りも付けた。 浴衣姿を見た男子達は「うわぁ今日は綺麗だね」「やっぱり浴衣姿いいね」と口々に褒めてくれる。 褒めて貰うのはまんざらでもなく、紗也たちも高揚した心地の中、楽しい雰囲気で花火大会会場に着いた。 場所取りの時、花菜は美和と紗也にさり気なく目配せをし、紗也と間島君が隣同士になるようにした。 少しずつ夜の帳が落ちて来ると、都会の夜景が夏本番を迎えた空に小さく揺らめいている。青春と体現したような光景が何処からか聞こえて来るBGMと一緒にお祭り気分を盛り上げた。 「あ、あがるよっ」 言ったのは誰だったか。 皆が一斉に空の上へと昇っていく小さな光にくぎ付けになる。 中天までたどり着いた光は、夜景の作り出す赤く暗い空ではじけた。 まさに大輪の花のような色とりどりの火が会場にあつまった人々の上で振りそそぐ。 きらきらと散っていく光の中、地を揺らす破裂音と遅れて聞こえた。 ぶわ、と会場内の喚声が上がる。 花火が始まり、皆んなが空を見ながら思い思いの歓声をあげる。 花菜と美和はふたりで何かを言い合いながら、視線はじっと上がり続ける花火を上に下にと追っている。 紗也はというと、花火よりも間島君をチラチラ見るほうが忙しかった。 ―――この前のTシャツにジーンズも似合ってたけど、今日のちょっとワイルドなのもカッコいい ―――間島君、彼女いるのかなぁ、どんな女の子がタイプなのかなぁ、私じゃダメかなぁ 次々と間島への想いが紗也の中で駆け巡る。 ドォンという爆音で最後の大玉が打ち上げられ、今日1番の歓声とともに花火大会は終了した。 駅までの帰り道は物凄い人混みで紗也と間島は他のメンバーとはぐれてしまった。 「はぐれちゃったね。紗也ちゃん。危ないから」 間島が紗也と手を繋いで来た。 ―――うわっ、手繋いじゃった。間島君、花火大会の間もあんまり話しかけてくれなかったから私の事嫌いなのかと不安だったけど、良かったぁ。やっぱり優しいっ 紗也がそう思っていると、間島が繋いでいた手を離した。 紗也が離されちゃったと落ち込む間もなく、さり気なく手を肩に回して来た。 「このほうがはぐれなくて済むよ」 ニコッと笑顔を紗也に見せた。 ひょっとしたら、間島君も私の事が好きなのかも…紗也も期待を滲ませ間島に体を預けると人混みの中を進んだ。 歩きながら、浴衣越しに伝わってくる間島の体温が紗也の心をとろけさせ、心のブレーキを完全に麻痺させた。 駅に着くと「紗也ちゃん1人暮らしだったよね。学校の近くだっけ」と間島が聞いた。「うん。駅から10分くらいの所」と紗也が間島に密着されてふやけた顔で答えた。 「今日、紗也ちゃん家に行っちゃダメかな」 さらにふやけた顔でうんと頷いた。
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