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『官』の多い女の子 4
次の日の朝、ラインで花菜と美和から「昨日あの後どうなった?」と聞いて来たが、その時はまだ紗也は間島とベットの中にいた。横を向くとまだ眠っている間島君の顔がある。なんだか夢みたい。幸せってこんなふうに突然くるんだぁ。紗也は昨夜の余韻が残る間島の胸にそっと頬をつけた。
すると、間島が「う〜ん」と言いながら目を覚ました。「紗也ちゃん、おはよう」と寝ぼけ眼で紗也を抱き寄せキスをして、そのまま昨夜の続きのようにまた紗也を抱いた。
その後、2人で近所のファミレスで、遅めの朝食を取りに行った。食べ終わると、
「じゃ、俺バイトあるから行くね。バイト終わったらラインするよ」と間島はファミレスを出るとすぐに帰って行った。
1人ファミレスの前に残された紗也は、暫く駅に向かって行く間島の後ろ姿をぼうっと見つめていた。
紗也は本当はもっと一緒に居たかったし、もっと優しい言葉を掛けて貰いたかったが、バイトあるからと言われると「行かないで」とは言えないし、変な事言ってウザいと思われるのも怖かった。
仕方がないので、その日は午後の授業にマジメに出る事にした。
授業終わりにカフェでレポートの準備をしていると、紗也と美和が目をキラキラさせて「みーつけた」と右と左から抱きついて来た。
「あれれ、何か昨日と違う気がするぞ。あれれっ」
美和が右の脇腹をつつく。
「何かあったな」
花菜も確信めいて言うと、左の脇腹をくすぐった。
2人の嵐の様な登場に間島が帰ってから寂しくて少し落ち込んでた気分が一気に晴れた。
「実は、あの後‥」と2人に話すと2人とも「え〜マジ。ビックリだよ〜」と声を合わせて驚くと同時に「良かったじゃん」と喜んでくれた。
「今日、バイト終わったらラインくれるって」
紗也は幸せオーラ全開でちょっと自慢げに言った。
しかし2人とも「いいなぁ。羨ましいなぁ」などとニコニコしながら紗也に彼氏が出来た事を喜んでくれた。
しかし、その日は間島からラインは入らず、やきもきしながら過ごし、やっと来たのは3日後だった。ラインは「ゴメン。バタバタしててライン出来なかった。」の文と謝っている顔のスタンプだった。
紗也はこの3日の間まだかまだかと1日中ラインのチェックばかりして、来てないとわかり落ち込んでばかりだったが、間島からのほんの1文のラインで3日間あんなに「もう連絡来ないかも」と不安で落ち着かない時間を過ごしていたのが、まるで無かったかのように一瞬で雲が晴れた様な気分だった。
結局、間島は週末に紗也の部屋にお泊りに来た。
それからはだいたい週末は紗也の部屋に泊まり、甘い言葉で体を合わせ夜ごと紗也を溶かしていく。そして、朝になると紗也の作る朝食だけたべてバイトがあるからと帰って行った。
後日、大学で会った花菜と美和にその話をすると、2人ははその日にラインするって言ってたのに3日後なんてと怒っていたが、紗也が「バイト先でトラブルがあって大変だったんだって。仕方がなかったんだよ」と間島をかばうのを見て口を噤んだ。
2人で紗也の部屋でマッタリしている時、間島が夏休み前に旅行に行かないかと提案した。
温泉なんかどう?と言われた。
「行きたいっ!」
紗也は即答で答えた。
「じゃ、決まりだね。紗也ちゃん、何処に行きたいかな」
スマホを取り出して温泉宿をしらべだす間島の横顔を見つめ、紗也は浮き立つ心を抑えず間島の腕に抱き着いた。
なんだよ、甘えたくなった?と冗談めいて言いながら紗也の頭をくしゃりとなでる間島にぎゅっと腕を絡みつかせながら、紗也は「だいすき、」とつぶやいた。
間島は、調べられないだろ、と紗也の腕から自分の腕を抜く。
「温泉、愉しみだなぁ」
「二人でゆっくりしような」
返ってきた間島の心地よい声を彼の肩に頭を預けながら聞く。
間島のスマホには温泉宿の写真が映し出されている。
2人で、温泉。
紗也の頭の中で空想が広がる。
新しいワンピース買おう。それと、もちろん下着も。何色のブラにしよう………。
それから2人でいろいろ調べて山梨の温泉宿を予約した。
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