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「従者もつけずおひとり? 可哀想ね。捻くれ者のあなたに手を焼いて、みんな長続きしないんですってね」
うっせえ、第一妃。
そのうちバスターキャノン砲で素粒子に分解してやる。
「お母様はお元気かしら。今度お茶会にお誘いしようと思っていたところよ」
「毒でも盛るつもりかよ」
愛想笑いを浮かべていた第一妃は、表情をなくした。暇すぎてろくでもないことばっか考えてんだろうな。可哀想なのはあんたのほうだよ。
「なんて失礼な子なの。母親に似て可愛げのない!」
「母さまの悪口言うんじゃねえ!」
オレはエレベーター横に飾ってあった花瓶を持ち上げ、花ごと中身をぶちまけた。第一妃に命中しドレスの色が濃く変わる。びしょ濡れになった第一妃は悲鳴を上げた。
ざまあみろ。
花瓶を思い切り床に叩きつけた。粉々に砕け散り、赤いじゅうたんを汚す。オレは到着したエレベーターに飛び乗り、素早く扉を閉めた。ヒステリックに叫ぶ声は遠ざかって、そのうち聞こえなくなった。
オレはぎゅっと両手を握りしめた。
腹が立つ。面倒くさい。すべてが。
だけど……投げ出したくなる諸々を抱えて、ここに留まらなきゃならない。
この腐敗した王宮で。オレも。腐りながら生きていくんだ。
それでも、母さまとユリウスがいるなら耐えられる。
ふたりのためならなんだってやる。
いつか誰かを殺すことになっても、母さまとユリウスが綺麗なままでいてくれるなら、オレは汚れたっていい。
どんなに汚れたって、かまわないんだ。
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