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側室は第三妃までいた気がするけど、田舎の別館に住んでるから第一妃以外は会ったことがない。それぞれ息子がいたのに、変死したって聞いた。第一妃の仕業だとか黒い噂もある。
っていうか、オレの親父もどうかしてる。正室の母さまだけ大事にしてればいいのに、ほかの女にまで子供産ませてさ。
こないだ結婚した叔父上――親父の弟――マックスは、側室を抱える気はないって話してた。それが本来あるべき男の姿だよな。
「礼拝の儀の新しい聖歌覚えたか」
「半分くらい」
「まだ半分かよ。今度の日曜、みんなの前で歌うのに」
オレたちは毎朝の務めとして、礼拝堂でケルサスの軍神マールスに祈りの歌を捧げる。
戦争で勝たせてくださいってやつだ。行事のときは大勢の前で歌うけど、普段は礼拝堂にこもって、ふたりだけで歌ってる。
「ソロパートはカイだから大丈夫でしょ」
「のん気だな、ユリウスは」
「カイ、僕の名前違うよ？ ちゃんと呼んで」
「あん？ ゆゆ、だっけ」
最近ユリウスは、すっかり廃れた外国語である東洋の平仮名にハマっていて、自分の名前を「ゆりうす」と表記するのをいたく気に入ってる。
丸みをおびた文字が「可愛い」らしい。そして、オレとリセが二文字の名前だから、自分も二文字で呼んで欲しいと言い出した。
ゆり、じゃなくて「ゆゆ」。そのこだわりがよくわかんねぇけど、響きは悪くないな。
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