2.Here I am

2/6
前へ
/16ページ
次へ
「それより、カイ。僕のクマクマ知らない?」  クマクマはユリウスお気に入りのテディベアだ。オレがなにかの式典で街に出たついでに買ったんだ。メイドのミーシャにあげるつもりだったのに、さくっとユリウスに奪われた。 「なくしたのかよ。扱い雑だな」 「雑じゃないもん。大事にしてるもん! カイからのプレゼントなんだから」  プレゼントねぇ。頬をふくらませて怒っても、愛らしい見た目のせいかまったく迫力がない。ユリウスって本当にオレの双子の弟なのか。草不可避。 「そのうち見つかんじゃねぇの」 「クマクマがいないと眠れないよ」  どこでなくしたか記憶をたどりながら、ユリウスが真面目に考え込んでる。オレも考え込む。昨夜はクマがいなくても、がっつり寝てたよな? 「ね、100の魔法なら見つかるかも。僕やってみようかな」 「魔法……ああ、あれか」  月明かりを浴びながら、願いを100回唱えると叶うっておまじないだ。満月の夜が効果的らしいけど、オレはまだ試したことなくて効果のほどはわからない。 「メイドに探させとけよ。そっちのほうが確実」 「そうかなぁ」  ユリウスは浮かない顔だ。しょうがないから、あとで探してやるか。オレってつくづく甘いよな。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加