2.Here I am

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 テディベアが見つかったのは、翌日のことだ。人通りの少ない廊下の隅に投げ捨てられていた。無残にも片腕をもがれて。  ユリウスが知ったら悲しむな。ちりっと胸が痛んだあと、ふつふつと怒りがわいてきた。  この王宮内でこんな馬鹿な真似をするやつはひとりしかいない。オレはクマを持ち帰り、メイドに縫合を頼んだ。 「ミーシャ。この腕、綺麗に直せるか」 「まあ、ユリウス様のぬいぐるみですね。お任せください、カイ様」  ミーシャは十六歳の女の子で、本館に仕えるメイドの中で一番笑顔がキュートだ。年の差はあるけど、いつか結婚してやってもいいと思ってる。 「頼んだぞ。オレちょっと出かけてくるから」 「かしこまりました」  メイドの控室を出て、リセのいる別館へ向かった。別館はオレの住む本館から一キロ離れた場所にある。  リセを呼びつけても逃げる可能性が高いから、出向くしかない。今日はヴァイオリンのレッスンだし、きっと部屋にいるはずだ。  連絡通路を使い、別館へ急いだ。本館と同じような作りだけど、部屋数は少なく五階が最上階だ。  オレはエレベーターで上がり、リセの部屋をノックした。メイドがアポなしで現れたオレに声をかけようか迷っていたけど、とりあえず無視だ。
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