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「おい、リセ。いるなら出て来い」
オレの呼びかけに、間もなくドアが十センチほど開いた。
「……なんの用? ぼくこれからヴァイオリンのレッスンなんだよね。あとにしてくれる?」
突然の来訪に不穏な空気を感じたのか、リセがドアの隙間から胡乱な目つきでオレの様子をうかがってる。
目鼻立ちのはっきりしたダークブロンドのチビはオレより一歳年下で、対抗意識が強くいたずら好きなクソガキだ。
「すぐ済む。ここを開けろ」
返事を待たずドアを蹴飛ばし、中へ入った。
「な、なんのつもり。乱暴だな。怪我したらどうするのさ、野蛮人っ」
押されてよろめいたリセが、うろたえながらも悪し様に文句をつける。
「本館に忍び込んで、ユリウスが大事にしてるものを廊下に捨てたのおまえだろ」
「はあ? とんだ濡れ衣だね。なんでぼくがクマを捨てるのさ。適当な推理で疑わないでよ」
「オレは『大事にしてるもの』って言ったんだ。クマとは明言してねえよ」
リセは自分のうかつさに、カッと顔を赤らめた。詰めが甘いやつ。
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