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3.Safest place to hide
修復を頼んでたクマの腕は、思いのほか上手く縫い合わされていた。これならユリウスは気づかないだろう。
「サンキュ、ミーシャ。上出来」
「どういたしまして。お役に立てまして光栄です」
ミーシャが微笑み廊下に跪いた。オレを見下ろさないようにするためだ。子供扱いされんのは屈辱だけど、オレの背丈の問題なので文句は言えない。
「カイ様は弟思いの良いお兄様ですね」
思いもよらない言葉をかけられてオレは頬が熱くなるのを感じた。
「そんなんじゃねえよ。ユリウスに泣かれたら困るから――」
「わかってますよ。カイ様のそういう優しさ、わたし大好きです」
まじかよ。相思相愛じゃん……。
「ぬいぐるみのこと、ユリウスに言うなよ」
「はい。ふたりの秘密ですね」
ふたりの秘密。大人っぽいワードがオレの心をくすぐった。早く背伸びねえかな。せめてミーシャと同じ目線くらいあれば、男らしくキスできんのに。
オレは改めて礼を言い、私室に戻った。ユリウスは外国語の授業からまだ戻ってきてない。
良かった。ユリウスに無残なクマの姿を見られずに済んで、ほっとした。
「なんか、だる……」
本館と別館を往復したせいだ。無理して脚を動かすと、すぐ調子が悪くなる。弱々しい自分に嫌気がさす。オレはクマを抱えたままベッドに横になった。
ユリウスも、ぬいぐるみなんて、早く卒業すりゃいいのにな……。
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