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――なんだぁ、歓迎会かよ。なんか可笑しいとは思ったんだよなぁ。
それでもなんとか、それらを隣の鳴神先輩に気取られないように、いつも通りに返したつもりだった私の「……はーい」という返事は、
「なんだよ、急に。さっきまでご機嫌斜めだったクセに。急に元気のない声出して、どうした? ん?」
そういって、不意に椅子から立ち上がって私の目の前まで近寄って覗き込んできた鳴神先輩によって、簡単に見破られてしまった私は、鳴神先輩と机に挟まれ退路まで断たれてしまいフリーズさせられてしまった。
途端に、私の首から上がありえないくらい熱くなってきた。
きっともう真っ赤になっているに違いない。
そんな状態になってしまっている私のいつもと違う様子に、私の目の前にズイっと近寄ってきた鳴神先輩も驚いているのか、瞠目してしまっている。
――ど、どうしよう。
そう思うのだけれど、どうすればいいかなんて分かるような余裕なんか、今の私にある筈がない。
この腹黒王子の鳴神先輩のことだ。きっと、からかってくるに違いない。そう覚悟して俯いた私が足元に視線を彷徨わせていると……。
「……な、なんだよ、俺がイケメンだからって意識してんじゃねーぞ。ほら、そんなとこで突っ立ってねーで行くぞ?」
数秒間、シンと妙な沈黙が流れたけれど、躊躇いがちに出された鳴神先輩の声は、気まずい空気を払拭させるためなのか、すぐにいつもの調子を取り戻して、私の耳へと入ってきた。
「……うっわー! 誰も言ってくれないからって、自分でイケメンとか言っちゃってカッコ悪〜。私はちょっとびっくりしただけで、別に意識したとかじゃありませんからッ!」
「なんだと? こんなにイケメンで心優しい先輩に対してカッコ悪いなんて。お前の目、腐ってんじゃねーの?」
「腐ってませんっ!」
「どーだか」
そこにすかさず私も乗っかるように鳴神先輩に言い返し、いつもと何ら変わらないやり取りが完成して。
ホッとした私は、いつものように鳴神先輩の後を追いかけて警視庁を出ると、そのまま歓迎会をしてくれるという店へと向かったのだった。
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