歓迎会のその後で

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   呼ばれた私が、机の周りをグルッと回って夏木の所まで行くと……。 「女同士仲良くしましょうよ、ね?」  長い睫毛をバサバサと揺らしながら、魅惑的な微笑を向けられてしまい。  女である私まで、ついうっかり見惚れてしまうという悩殺ぶりと、甘い香水の香りに私はクラクラと酔ってしまいそうだったが。  さっきの盗撮……もとい、隠し撮り(言い換えたところで、同じだとは思うのだが、一応刑事の集まりのため言い換えておくことにする)のことが頭を過り。 「夏木先輩、さっきスマホで何撮ってたんですか?」  好奇心に勝てなかった私は、夏木の隣に腰を下ろすと同時に、声を潜めて訊いてみると。  一瞬、何を訊かれたかが分からなかったのか、キョトンとしている夏木に対して、その横で私の話の主旨にいちはやく気付いたらしい松坂が、夏木に何やら耳打ちをして。  耳打ちされた夏木は、「あぁ、これのことねぇ?」とひとりごちながら机に置いてあったスマホを弄り始めた。  数秒して、私の正面に差し出されたスマホの画面には、BL好きな私が思わず目を見張ってしまうほどの萌画像が映し出されていて。  スマホを差し出している夏木からは、 「吉沢先輩って、性格は別として、黙ってる分には無駄にイケメンでしょ? こーいうベストな萌え萌えショットが撮れちゃうのよーん。……て、ヤダ、私ったらBL好きだってバラシちゃったじゃないっ! ちょっと、御手洗さん。そんなに驚かなくてもいいでしょ? 今時腐女子なんて珍しくもないんだし。でも別に、私は腐女子って訳じゃないのよ? ちょっとBL的なシチュに目がないってだけで。だから口外しちゃダメよ? 鬼塚班長の耳に入っちゃったら最後、警視庁中に知れ渡っちゃうんだからぁ」 なーんて、意外な言葉が返ってきてしまい。  何より、こんなにも身近に自分と同じような人間が居たことが嬉しくて、当然お酒の所為もあったため、 「これ、私も貰ってもいいですかぁ!?」 という言葉をそれはそれは大きな声で放ってしまっていたのだった。
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