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そんな考えなしのおバカな私の口を見事な連携プレーで鮮やかに、おしぼりで塞いで阻止したのは、勿論、夏木と松坂だった。
「……んっ!? んっ、んんッーー」
私がまさか大きな声を放つという暴挙に出るとは思わなかったのだろう……。
慌てふためいた夏木と松坂が勢い余って私の口だけじゃなく、鼻まで覆ってしまってるから息が苦しくて堪らない。
なんとか二人に気付いてもらおうと必死に訴えてみるが……。
「なんだ、どうした? 突然大きな声出して、ビックリするじゃないか!」
ビールの入ったジョッキ片手に、メタルフレームの眼鏡越しに眼光鋭い視線と鋭い声を放った吉沢主任に次いで。
「そうだぞ? 心臓が止まるかと思ったじゃないか? まったく、最近の若い奴は、酒も静かに呑めんのかッ!」
いつもは威厳の欠片もないはずの鬼塚班長にまで厳しい突っ込みを食らってしまう始末。
「もう、やだー。御手洗さんったら酔っ払っちゃってー。ねー? 松坂」
「……ハハハ」
夏木も松坂も鬼塚班長や吉沢主任に見せる訳にはいかない例の萌え萌えショットがある所為で、それをなんとか誤魔化すために必死なのだろう。
二人とも、私の鼻まで塞いでいることに気付くような、そんな余裕はなさそうだ。
私の意識が薄っすらと遠のきかけたその瞬間。
「こら、てあらい、騒ぐな。酸欠になるぞ」
「ーープハッ!? はぁ、はぁ、はぁ、しっ、死ぬかと、思った。……はぁ、はぁ」
「夏木さんも松坂さんも、こんなとこで刑事が殺人なんてシャレになんないでしょ?」
「あら、やだ、死ぬなんて大袈裟なんだからぁ。ねぇ?松坂」
「ハハハ」
意外にも助けに入ってくれたのは、私とコンビを組んでいる鳴神先輩だった。
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