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「松坂、今夜は呑みまくるわよッ!」
「はい!」
鳴神先輩が元の席に戻った後、鬱憤を晴らすようにビールのジョッキを煽りだした夏木に続き、いつになく威勢のいい声を放った松坂がこれまた夏木と同じようにビールジョッキを豪快に煽り始めた。
なんとなく居心地悪さを覚えた私が元の席へと戻ろうとした時のこと。
これまたお決まりのように、ビールジョッキを煽っていた夏木によって、肩を組むようにして立ち上がるのを阻止されてしまったのだった。
そして私の耳元には、只ならぬ色気を孕んだ夏木の艶やかでぷっくりと紅く熟れた唇が寄せられている。
もう嫌な予感しかしない。
ーーきっと尋問されて、昼間のコトをゲロったら最後、警視庁じゅうに噂が広まるに違いない。
想像して、全身から血の気が引くのを感じているところ。
「御手洗さん、鳴神がどうして女嫌いになったのか、知りたくな~い?」
まるで悪魔が甘い言葉を使って、人をたぶらかすような、そんな怪しい口調で夏木に囁かれてしまい。
肩透かしを食らいつつも、メチャクチャ気になって、何気なくを装いつつ鳴神先輩の方へと視線を彷徨わせてみれば……。
鬼塚班長とOB鮫島に幻のお酒をお酌する鳴神先輩の姿が視界に入ってきて。
当然、昼間あんなこともあったし、鳴神先輩のことを知りたいという欲求がムクムクと大きくなっていくのを抑えることができなくなってしまった私は、
「……し、知りたいです!」
夏木の誘惑にあっけなく完落ちし、そう返してしまっていた。
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