歓迎会のその後で

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   すっかり酔っ払ってしまっている私のテンションは高くなっていて。  おまけに、気まで大きくなってしまっている私は、もはや怖いものなし状態。  そんな怖いものなしの私は、面倒見のいい先輩である鳴神に、常日頃の鬱憤を晴らしてでもいるのか、さっきから我儘なことを言って困らせているのだが……。  どういう訳か、翌日の朝になって目覚めた時には、この時の記憶だけが綺麗さっぱりと抜け落ちているのだった。  ✧✦✧ 「鳴神せんぱ~い! ヤダー! まだまだ帰りたくな~い」 「……お前なー。酔っ払いの分際で我儘ばっか言ってんじゃねーよッ!」 「ええーー!! やだ、やだ、やだ、絶対、ヤダーッ!!!」 「……分かったからもう黙れっ!」 「ヤッター! イエーイ!」  一体、どういう状況なのかというと……。  鳴神先輩に言われるままに、店からさほど遠くないタクシー乗り場の手前まで来ていた酔っ払い状態の私だったのだが。  タクシーに乗り込む先客を目にした途端、私は肩を貸してくれていた鳴神先輩のスーツのジャケットの袖口の辺りを両手でしっかりと掴んで。  まるで小さな子供が身体全体をブンブン揺らしながら『イヤイヤ』を表現するようにして駄々を捏ね始めてしまったのだった。  そんな酔っ払いで我儘放題の私に、最初は聞く耳なんて持たなかった鳴神先輩だったのだが……。  私があんまり大きな声で騒ぐもんだから、周りの視線が二人に集まってくるせいか、さっきから落ち着かない様子の鳴神先輩。  辺りの視線を気にしている様子の鳴神先輩は、きっと、これ以上騒いでいたら、警視庁に通報でもされて、職質なんか掛けられたら、それこそ『笑い種にされてしまう』とでも考えたのだろう。  終いには、私の言う通りにすることにして、私が行きたいという日比谷公園へと向けて歩きだしたのだった。 「うわー! すごーい! ね、ね、鳴神せんぱーい、来て良かったでしょ? 早く早くー!」 「……あぁ、そうだな」  ほどなくして到着した日比谷門正面にある色とりどりにライトアップされた綺麗な噴水を目にした私のテンションは、諦めモードの鳴神先輩とは対照的にグングン上昇してピークに達していたのだ。
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