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ライトアップされて、色とりどりに移り変わっていく噴水をベンチに腰を下ろしている私がぼんやり眺めていると……。
少し前に「ちょっと飲み物買ってくる」と言ってどこかに行ってしまっていた鳴神先輩が私の元に帰ってきて。
その姿を目にした途端、私の表情はパーッと花が咲くみたいに明るいモノへとみるみるうちに変わっていく。
当然、酔っ払っいの私はそんな自分の反応には少しも気づいちゃいない。
そんな子供みたいな私の姿に、戻って来た鳴神先輩もそれにつられるように、通常よりも、表情が優しくなり口元も緩めているように見える。
もしかしたら、酔っ払ってはしゃぎまくる私に、心底呆れ果ててしまっているからなのかもしれないが、酔ってしまっている私には、そう見えてしまっているのだからしょうがない。
「ほら、酔い覚ましにこれでも飲んで静かにしてくれ」
「えー、そんな冷たいいい方しなくてもいいじゃないですかぁ? あっ、そうだ。鳴神先輩が飲ませてくださいよ~!」
さっき戻って来た時の鳴神先輩の表情がとても優しいものに見えてしまった私は、これ以上にないってほどに気を良くしてしまったため、我儘もドンドンエスカレートしていくのだった。
その所為で、私にミネラルウォーターのペットボトルを差し出してくれている鳴神先輩の動きをピタリと停止させてしまうくらいに。
……がしかし、下戸である鳴神先輩は当然お酒なんて一滴も呑んでいないため、酒に呑まれた私とは違って、至って冷静な判断ができる。
「はぁ!? なんで俺がお前にそこまでしなきゃなんねーんだよ! お前バカか?」
まぁ、少しは動揺しているようにも見えなくもないが、鳴神先輩の普段通りの返しに、私の表情はドンドン曇っていく。
「だってー、見てくださいよー。あっちもこっちも、チュッチュッ、チュッチュッやってるじゃないですかぁ」
それもその筈、酔っ払ってしまっている私は、鳴神先輩が戻ってくるのを一人で待っている間、公園のあちらこちらでイチャつくカップルを目にしてしまい。
昼間の鳴神先輩とのあのキスのことを思い出していたのだが……。
あの後、なんの動揺もしなかったどころか、意識した素振りを微塵も見せなかった鳴神先輩に対して、抱いてしまった悔しさまで思い出してしまっていたのだ。
だから私は酔っ払いながらも、鳴神先輩への報復を試みたのだ。
けれど、自分が思っている以上に酔っ払っている所為で、自分がどれほど大胆な発言をしているかなんてことには微塵も気づいてはいないのだった。
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