歓迎会のその後で

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   ただでさえ、酔っ払って迷惑をこうむっているというのに、とんだ大胆発言をお見舞いされてしまった可哀想な鳴神先輩は、目をひときわ大きく見開いたあとで、眉間には深い皺をいくつも刻んでいる。  きっと、鳴神先輩のことだから、この酔っ払いの戯言をどうやって処理してやろうかと考えあぐねてでもいるのだろう。  ――もっと困っちゃえばいいんだ。  なんてことを思いながら私が鳴神先輩の反応を窺っているところに、困惑しきっている様子の鳴神先輩の盛大な溜息が聞こえてきて。 「……お前、『チュッチュッ、チュッチュッ』って、あれは恋人同士だからだろうが。それに、あんまり大きな声でそーいうこと言うな。通報でもされたら困るだろう? ほら、水飲んで落ち着け。な?」  その数秒後に遅れて、酷く疲れたような表情を覗かせながらではあるが、こういう酔っ払いの扱いに慣れた様子を見せる流石は警察官。  至って冷静な落ち着いた声で酔っ払った私にやんわりと言い聞かせるようにして語りかけてきた。  そうして、さっきと同様、私にミネラルウォーターのペットボトルを差し出してくれている。  事故とはいえ、昼間の私とのあのキスのことなんかもうすっかり忘れてしまっているような、そんな態度の鳴神先輩の言動に、私は悔しいのを通り越して、悲しくなってきた。  やっぱり私だけが意識しちゃってるんだ。  鳴神先輩にとっては、あんなことたいしたことじゃなかったんだ。  きっと、蚊に刺されたくらいのことだったんだ。  酔っ払いながらもそう考えが至ってしまった私は、悔しいやら、悲しいやら。  とうとう目尻からは大粒の涙がポロポロと零れだしてしまい、泣いてしまうのだった。 「……え!? お前、何泣いてんのッ?」  私にペットボトルを差し出しても受け取らずに、それどころか、突然泣き出してしまった私の異変にすぐに気づいた鳴神先輩の驚いた声が聞こえてくるも。  私はそんなのお構いなしに、小さな子供のようにわんわん泣き続ける。
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