歓迎会のその後で

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   ……の、筈だったのに。  何故か私は、乱暴に払いのけた筈の鳴神先輩の腕に強引に引き寄せられていて。  自分の身に何が起きているのか理解するまもなく、涙で濡れた頬もそのままに、気付いた時には、鳴神先輩の腕の中に納まっていたのだった。  それだけじゃなくって、泣きぬれた私のことを腕に閉じ込めた鳴神先輩は、私のご機嫌をとるためだろうか、私の背中に回した手を上下に優しく動かして宥め始めたから堪らない。  そして極めつけは、 「もう泣くな。お前に泣かれると、どうしていいか分からなくなる。言いたいことがあるなら言えよ」 なんてことをさっきと同様王子様仕様の優しい声で、しかも耳元で優しく囁かれてしまい。  まさか鳴神先輩がそんなことをしてくるとは思ってもみなかった私の心臓は、これ以上にないって程の尋常じゃない速さで鼓動を打ち鳴らし、もう爆発寸前だ。  生まれてこの方、恋愛経験が皆無の私に、当然こんな風にして誰かに抱きしめられた経験なんてある訳もなく。  しかも王子様仕様の鳴神先輩にこんな風に抱きしめられてしまってるなんて……。  このままじゃ、とてもじゃないけど、心臓がもたないよ。  ――一刻も早くこの状態から抜け出さないと。  生命の危機を察知した私は、顔を埋めている鳴神先輩の胸を両手で突っぱねるように押し返した。 「……こ、こういうことを平気でやれちゃう鳴神先輩と違って、私はキスだってしたことない処女なんです! は、初めてだったのに、意識もしてもらえなくて……。なんにもなかったように、平気な表情でいられる鳴神先輩に、何か言ったところで、私の気持ちなんて分かる訳ないじゃないですか! もう、放してくださいっ! もうこれ以上私をドキドキさせないでくださいよ! 心臓、止まっちゃうじゃないですか! こ、こんなの初めてで、どうしていいか分かんないんですッ!」  ただでさえ酔っ払っている所為で、正常に思考回路を働かせることのできない状態だと言うのに……。  それでもなんとかしてこの状況から逃れるために必死になって言っているうちに、酔っ払い状態の私は勢いづいて言わなくてもいい余計なことまで口走っていて。  勢いづいて興奮してしまった所為か、急激に酔いが回ってしまい。  鳴神先輩の腕の中で力尽きたように、鳴神先輩の胸にしなだれかかった状態で、 「あれ? 頭が……まわる」 そう言ったきり意識を飛ばしてしまい。 「おいっ、御手洗ッ!?」  私の異変に気付いたらしい鳴神先輩の驚いたような声と一緒に私の意識もそこでプツリと途絶えてしまったのだった。
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