始まる旅。

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大都市と郊外を結ぶ複線の二番線と三番線。スーツの黒や学生の金髪、お嬢様学校の赤チェックのスカート。鮮やかな色たちを詰め込みそれぞれの今日へと連れてゆく六両編成。 昨日僕も大都市から乗った路線。二時間かけてついたターミナル駅。既に出ていたローカル線の終電。仕方なく泊まった駅近くのホテル。そして今日を迎え、四番線で列車を待つ七時半。 スカスカの時刻表。二時間に一本しかない列車。次の列車は八時。 とりあえず腰かける安っぽい水色のベンチ。目に入る地元の病院の看板。耳に入る三番線の雑踏。昨日のバイト終わりからの旅で疲れ切った両足。欠伸をして閉じた瞼。爽やかに晴れる九月中旬の空。すべてが心地よくて眠り、三十分を一瞬にした三十分。 気が付くとホームに入っている列車。白い車体にオレンジのライン。一両編成のワンマン、ディーゼル車。
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