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人々の騒然が冷めやらぬ最中、潮は次第に戻り始める。
急激な引き潮は、理に従い、急激な津波となって、別府の街を襲った。
津波は扇状地のように広がる別府の山村をところ構わず、なぎ倒した。
津波は山まで登る勢いで、人も、動物も、妖怪も、森も。
なにもかもを飲み込んで、海へと帰って行った。
残ったのは避難できた数少ない人々と、愛する人を失った悲痛な叫喚。
我らが依代の石像を離れ、弱る力を振るい、陸に揚がった時には、惨状しかなかった。
そして我らは人の業を知った。
人々から向けられたのは怒りや、憤り。
「何故、守ってくれなかった」
「何の為の守神だ」
そして我らは祭り上げられ、神への生贄として人々に捕獲された。
抵抗などするはずもない。
あの頃、我らは人の為に生きていたのだから。
しかし運命は残酷に、我らは生贄として火炙りにされる時が来た。
人々の想いを失った我らには、抜け出す力などなかった。
ただ焼かれる遠くない未来を見つめ、哀れんだ。
人とは愚かだと、我らは尊く、人を妬むことなく、逝こう。
こんな世の中、必要ない。
しかし、そこにとんだ横槍が現れた。
その者の名は――――。
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