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「いやいや、寒すぎてあかんわぁ」
暢気に欠伸などして見せて、背伸びで前脚がぴんと伸びる。
一見はただの黒猫。
だけど喋り始めれば、関西弁混じりの癖がなんとも人を苛立たせる。
「さてさて、お待ちかねの年越しムードって感じやな」
隠は街を見下ろす。
クリスマスというイベントに乗っかったまま、街はイルミネーションや、街灯でひどく明るい。
クリスマスには花火もあったからか、人間の熱気は年末に向けて冷めやらぬ状態だった。
「今年はどんな化け物が来るかね? 空からか、海からか、はたまた山からか」
「そう暢気に構えるなよ。すぐに笑えなくなるんだから。隠の性格上」
事が始まれば、誰よりも叫んで、文句や誹謗中傷、自暴自棄になること間違いなしだ。
「今、なんか考えてたやろ」
「さぁ、何のことだか」
「ったく。明はわいのことを見下しとるやろ」
「そう腐るなよ、今日はほんとに頼りにしてるんだから」
「ふん、ほんとだか」
「協力しないとどうなるかわかんないよ」
互いに軽く目を合わせて、ふっ、と小さく笑い合う。
いがみ合いは2人のコミュニケーションであり、只のじゃれ合いだ。
「さぁて、太陽も沈んできたようだし、ぼちぼち準備していきましょうかね」
隠が黒い妖気に包まれる。
隠はこれでも珍しい妖怪で、人型から猫型へ、猫型から妖型へと変貌をとげることが出来る。
そしてなにより妖気の純度は歴史に名を残す妖怪にも引けをとらない。
ただやはり、性格的にそうはならないのだ。
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