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たくさんの交易船が行き交い、多くの物流で賑わっていた。
そんな島の片隅に、長閑に佇む出で立ち。
神社の入口には阿吽で左右を守護する獅子と狛犬。
獅子は曰く、角を持たず、口を開いて、権力の象徴。
狛犬は曰く、角を持ち、口を閉ざした架空の生き物。
獅子は勇猛に護り、狛犬は歴然と護る。
2匹にして一対の、唯一無二の守り神として、人々に崇められた。
しかし我らは神ではない。
人が創りし、偽りの神。
想いこそあれ、秩序までは崩せない。
平和に過ごしていた我らを脅かしたのは、戦でもなければ、妖怪でもなかった。
ある日、何事も無かったこの大地に、神の矛が突き刺さった。
それが――――。
慶長豊後地震――――。
大分を中心に壊滅的な被害を齎した。
大地は歪み、液状化により、地滑りが起き、島は一刻を持たずして、海の藻屑となった。
そして恐れていたことが起きた。
此地を守護するものが崩れたのを狙うように、妖怪が現れた。
しかしそれも神からすれば些細にすら成らぬもの。
地震により一旦、海面は低下した。
潮が引いたわけだが、それは異常な引き潮。
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