正月行事

9/9

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 たくさんの交易船が行き交い、多くの物流で賑わっていた。  そんな島の片隅に、長閑(のどか)に佇む出で立ち。  神社の入口には阿吽で左右を守護する獅子と狛犬。  獅子は曰く、角を持たず、口を開いて、権力の象徴。  狛犬は曰く、角を持ち、口を閉ざした架空の生き物。  獅子は勇猛に護り、狛犬は歴然と護る。  2匹にして一対の、唯一無二の守り神として、人々に崇められた。  しかし我らは神ではない。  人が創りし、偽りの神。  想いこそあれ、秩序までは崩せない。  平和に過ごしていた我らを脅かしたのは、戦でもなければ、妖怪でもなかった。  ある日、何事も無かったこの大地に、神の矛が突き刺さった。  それが――――。  慶長豊後地震――――。  大分を中心に壊滅的な被害を(もたら)した。  大地は歪み、液状化により、地滑りが起き、島は一刻を持たずして、海の藻屑となった。  そして恐れていたことが起きた。  此地(このち)を守護するものが崩れたのを狙うように、妖怪が現れた。  しかしそれも神からすれば些細にすら成らぬもの。  地震により一旦、海面は低下した。  潮が引いたわけだが、それは異常な引き潮。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加