第1話 カームシティの魔法術師

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 男はロボット技師であった。だがロボットメーカーやメンテナンス会社には勤務しておらず、こんな地下牢のような薄汚い建屋に一人で引きこもっていた。一人でいなければならない理由があった。 「なにを見てるんだ? 用が済んだなら、さっさとメシの準備をしな」  手元を見つめる視線を気にしてか、『親方』はすごんだ。 「あ、はい──」  弾かれたようにMM‐TZ48は背筋を伸ばし、そそくさと部屋を出て行った。 (自分もここで修理されたけれど、いつかは部品取りにされるのだろうな)  冷静にそう思った。  MM‐TZ48は故障して棄てられていたところを、ほかのLSHロボットとともに親方に拾われた。ジャンク屋の裏手で野ざらしにされ、金属回収業者に売られる直前だったのを、格安でゆずってもらった〝資源ゴミ〟のうちのひとつだった。
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