第1話 カームシティの魔法術師

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 清掃はされていたが、雨漏りの修繕までは手がまわらない染みだらけの廊下から、MM‐TZ48は親方の食事の支度をするために簡素なキッチンに入る。  ニーヴン星系第六惑星、ニーヴン・ゼータのスラム都市、カームシティの一郭にあるこの古びた集合住宅に、親方は勝手に住んでいた。築年数不明のこの建物はあちこち傷んでいて、使えそうな部屋を選んで自己のテリトリーとしていたが、文句を言う人間はいなかった。それほど多くの人間はこの集合住宅……この都市には暮らしていないのだ。資源枯渇によって人々から見捨てられた街──それがカームシティであった。  MM‐TZ48は、化石燃料から作られたレーションのパッケージをあける。
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