第1話 カームシティの魔法術師

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 食材は近くの商店から買ってくるが、品揃えは悪く、そんななかで工夫しながら日々の食事をつくっていた。新鮮な天然の食材などという贅沢なものは手に入らない。家畜のエサのような出所不明の加工食材を組み合わせ、いろんなレシピを工夫してなんとか料理らしきものをこしらえていく。ときどき味見をして、酸味や塩分を確認した。LSHロボットなので成分濃度の分析はできるのだ。が、味わうことができなかった。美味しい、という感覚はわからない。わからないが、センサーがなんとか動作している限り料理は作れた。  ただ、魔法術でもってパーツの寿命をのばしても、やはりいつかは故障する。  さきほど倉庫で機能停止したLSHロボットから部品取りしたが、MM‐TZ48もいつかは部品を取られる立場となるだろう。なぜなら、MM‐TZ48の以前に親方の身の回りの世話をしていたLSHロボットは、今や壊れて倉庫に放り込まれ、部品取りされるのを待っているからだ。  だからといってMM‐TZ48はここから逃げ出せはしなかった。
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