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どういうことなのか聞こうとしたが、それはできなかった。
斎は再び私を抱き寄せ、唇を重ねる。
「斎っ……」
「舞が悪い」
何度も触れる唇。触れているだけだというのに、身体の力が抜けていくような官能的なキス。
神聖な結婚式をこれから行うというのに。
「愛している、舞」
「斎……」
あぁ、もう完全にスタッフさんをもう一度呼んで、メイクを直してもらわないと。
さっき直してもらったばかりだというのに恥ずかしいことこの上ないけれど、それでも仕方がない。
何度も口づけられて落ちてしまった紅はもちろんだけれど、私の瞳からは次から次へと涙が溢れ落ちてくる。
神様、この人に出会わせてくれて、本当にありがとうございます──。
誰よりも大切で、誰よりも愛しい人と結ばれる今日という日。
私はきっと、一生忘れない。
斎を見つめると、斎も私の想いを察したかのようにゆっくりと頷いてくれた。そして、斎は再び唇を私の耳元に寄せる。
「一生……大切にする」
式の前に、こんなに泣かせてどうするんだろうか。
私は呆れながらも、腕を伸ばし、斎に抱きついた。
幼い頃からずっと一緒にいてくれた、大切な、大切な人。
誰よりも愛しい人と、新しい人生の第一歩を。
「これからもずっと、一緒に歩いて行こうね」
神様よりも、あなたに誓う。
──病める時も健やかなる時も、私は斎を愛し続けます。
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