翼あるもの

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 4ヵ月の見習い士官を修了したフェルザーは、本日晴れて少尉に任命された。襟に留められた金の階級章が、姿見の中でささやかに、誇らしげにきらめく。  配属となったアッシュフィールド駐屯地には、およそ2千人の兵士が在籍していた。そのうちの僅か6名、少数たるが故か、軍内部でその存在を知らぬ者がいない特別な兵士がいる。  彼らはスパルナ族と称されるラクサーシャであった。居住区に閉じ込められているラクサーシャと異なり、“名誉貴族”の称号のもと、ある程度の権利を与えられている。それと引きかえに、スパルナ族は兵士として生きる事を義務付けられている。  ラクサーシャのなかでも数少ないスパルナ族は、翼を持ち、空を自由に駆る事ができた。その為、居住区内に住まわせる事は難しく、軍事的に役立つだろうとの見解から、彼らを兵士として扱う事になった。  アッシュフィールドに在籍する6名のスパルナ族は、同じ敷地内にいても、滅多にその姿を見せる事はなかった。スパルナ族がいるというのは、本当は単なる噂なのではないかと疑う新兵もいた。  小隊長となったフェルザーも、これまでスパルナ族を見かけた事がなかった。だから、「おまえの隊に配属されてるスパルナ族、リュークヴィストってヤツは猛禽類だぞ。舐められんようせいぜい気を付けるんだな」と上官から言われても、ピンとこなかった。  仰々しい任命式を終え、フェルザーは軽い昼食を済ませると、兵舎の裏手にまわった。ここには芝生が敷き詰められ、ところどころにモクレンが植えられている。赤紫色の花が咲いていた。  フェルザーは芝生に腰を降ろすと、モクレンに背を預けた。慣れない事ずくめでさすがに疲労が溜まっている。ふうっと息を吐き出し、目を閉じた。
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